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【追悼】「無名だった森保一を見出した」だけではない「稀有なリーダー」今西和男の本質とFC岐阜社長時代の苦難 (3ページ目)

  • 木村元彦●取材・文 text by Yukihiko Kimura

【岐阜での「今西おろし」の真相】

 FC岐阜の社長として差配を振るった2009年は、選手やスタッフが学校を回る地域貢献活動を一気に充実させた。Jリーグが地域貢献の指標として報告した「ホームタウン活動実績」において、FC岐阜はJ1J236クラブにおいて、最も多くの時間を記録していた。総活動時間は1489時間、Jクラブ平均が519.3時間であるから、他のクラブの約3倍である。

 そして今西さんは、母校である東京教育大(現筑波大)のパイプを生かし、岐阜の財界2トップ、西濃運輸(大垣市)の田口義嘉壽会長、インフォファーム(岐阜市)の辻正会長からの支援を取り付けつつあった。ふたりの会長も今西さんの人柄に惹かれていった。

 しかし、やがてライセンス事務局の職員は、本来、直接対話すべきFC岐阜の社長ではなく、秘密裏に岐阜県庁や市役所と直接やり取りを重ね、クラブ人事に介入していった。岐阜県庁もライセンス制度を前にして腰が砕け、恩人である今西さんを守ろうとするどころか、排除に向かう。県庁への情報公開請求で明らかになったが、この頃、Jリーグと岐阜県庁は、メールやFAXで頻繁に連絡を取り合い、今西おろしの策動を粛々と進めていた。

 県庁はFC岐阜というクラブが、今西社長のもとで真に地域に愛されるクラブづくりに向けて動いている現状を見ずに、ただライセンス事務局の顔色だけを窺っていた。県の商工労働部次長(当時)は、厳秘文書として「JリーグはFC岐阜を『予算管理団体に指定し、発表する予定』」「身の丈に合った形でFC岐阜を位置付け直すことは、今西体制では無理」とのレクチャーをアンダーグラウンドで古田知事に行なっている。

 古田知事はとたんに掌を返し、「予算管理団体に指定されても、県は増資をしない」と明言、大恩ある今西さんを叱責し、解任する側に回った。J2昇格時の「県庁は応援しますから、ぜひ社長になってください」という言葉は紙くずのように軽く捨てられた。FC岐阜が十六銀行から借り入れているうちの1億5739万円を、社長の今西さんが個人保証していることは厳秘文書にも示されていたが、それを承知の上で、本人に押し付けたまま社長を解任している。

 試合会場に入る関係者パスまでも取り上げられた今西さんは、それでも最後までスタジアムへ足を運び、一般席の最前列からFC岐阜の選手たちに声援を送っていた。「頑張れ! 落ち着いていけ!」「練習どおりにやれば大丈夫だ!」と、選手を激励するエリアにも入れてもらえないなかでも、必死に声を張り上げるその姿を見て、近しい者は涙が止まらなかったという。

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