【Jリーグ】移籍金の適正化が進むなか、いつか100億円の日本人フットボーラーは現れるか
日本人Jリーガーの移籍金問題を考える 後編
能力の高い日本人の若手選手は、欧州のクラブに引き抜かれることが濃厚だ。Jリーグはそれを前提として、彼らが適正価格で引き抜かれるための環境を整備している。いつの日か、欧州のトップクラブに超高額を積んでも欲しいと思わせ、その値札に見合う活躍を披露する日本人選手は出現するだろうか──。
いまや欧州5大リーグでもU-21世代やU-23世代を対象としたリザーブリーグが当たり前に整備されており、育成の面で高く評価されるベルギーやポルトガル、オランダなどでも、リザーブリーグから次々に質の高いタレントが輩出されている。一部の国ではBチームを下部リーグに参戦させて、同世代ではなく大人との試合のなかで経験を積ませ、成長速度を上げようとするケースも珍しくない。
2010年にユルゲン・クロップ監督(右)が率いたボルシア・ドルトムントに約4000万円で移籍し、即座に大活躍した香川真司 photo by picture alliance / Aflo
Jリーグもこうした世界のスタンダードに歩調を合わせて、変化や成長のスピードを上げていかなければならない。選手たちが成長するだけでなく、リーグやクラブ、チーム強化に携わる人材にも、これまでとは異なる基準が求められる時代になりそうだ。
現在、複数のクラブが欧州でのプレシーズンキャンプを検討しているなか、サンフレッチェ広島の強化部長時代にトルコでキャンプを行なった経験を持つ足立修氏(Jリーグフットボール本部フットボールダイレクター)は「スピード感」の違いに言及しながら、それに適応していく必要性を説いた。
「先日、私もヨーロッパでのキャンプ地の視察に同行しましたが、そこには夏になると常時100クラブほどが集まり、約2カ月でのべ1000クラブが入れ替わり立ち替わりやってきます。
すると当然ながら、膨大な数のスカウトが様々なクラブや選手を見てまわり、移籍も発生します。さっきそこで練習試合に出ていた選手が、数時間後に別のクラブと契約して隣のグラウンドで練習試合に出ているようなケースも実際にあるんです。だからこそ、強化に携わる人間は常にたくさんのワールドワイドなパイプや情報を持って、これまでとは違うスピード感で仕事を回していかなければならなくなるはずです」
(※編集部注:インタビュー後の12月15日、Jリーグが欧州キャンプ助成金制度を新設することが決まった)
サガン鳥栖でスポーツダイレクターを務めた経験を持つ小林祐三氏(Jリーグフットボール本部企画戦略ダイレクター)も、「すでにその兆候は見え始めていますけど、強化部は常に編成をし続ける必要が出てくると思います」と述べ、次のように続けた。
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