【Jリーグ】移籍金の適正化が進むなか、いつか100億円の日本人フットボーラーは現れるか (2ページ目)
【「つねに何らかの交渉をし続けるような世界に」】
「理想は『このスクアッドでいきます』と、ある程度チームを完成させた形でキャンプインすることですが、今後はこれまでのようなチームづくりは難しくなっていくと思います。
誰かと契約交渉をして、既存の選手との契約更改の交渉もして、それが終わったら移籍市場が開いて。その1カ月半から2カ月の間は常に誰かを引き抜かれ、穴を埋め、その途中で別の選手を獲得したら、また引き抜かれて......と、つねに何らかの交渉をし続けるような世界になっていくのかなと。
Jリーグもすでに常に選手のトレードが行われているような世界になってきていると思いますけど、シーズン移行によってヨーロッパや他の多くの国々と足並みが揃うと、変化は加速するはずです。足立からお伝えしたように、キャンプ中でも『(選手を)引き抜かれたので、他のクラブからその場で別の選手を獲得する』というケースも出てくるでしょう」
数年前、ポルトガルの某クラブでスポーツダイレクターを務めていた人物に、「日本人選手はなぜこんなに安い給料でもオファーを受けてくれるんだ?」と尋ねられたことがある。Jリーグからヨーロッパへの移籍が一気に増え、多くの日本代表クラスの選手たちが5大リーグではなく、ベルギーやポルトガル、スイスの1部、あるいはドイツ2部など、競技レベルの一段下がるリーグへ移っていた頃だ。
当時であれば、"買い叩かれている"という表現は、間違いではなかったと思う。だが母数が増え、評価を高めてヨーロッパ内でステップアップするケースも増加し、2022年のカタールW杯では日本代表がドイツ代表やスペイン代表を撃破。そこからは日本人選手たちへの見方が変わりつつある。
ヨーロッパで長くプレーする選手が増えた一方、短期間でヨーロッパからJリーグへ戻ってくる選手も増えた。海外経験を持つ選手がJリーグでプレーすれば、相手はその選手がプレーしてきた環境やレベルなどを肌身に感じられる。このように、日本にいながら間接的に海外に触れる機会が増えたことにより、日本人選手やJクラブは海外移籍に関する知見やノウハウを蓄積していき、その選手のキャリアにとって、より適切な選択や判断ができるようになってきたと言える。
外的要因と内的要因の両方が絡み合うことで、ヨーロッパのクラブも日本人選手を「もう買い叩くことはできないのではないか」と小林氏は言う。
2 / 3

