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太田宏介が選ぶJリーグ歴代レフティトップ10「あのテクニックはお化け」「人生を変えてくれた」左利き選手たち (4ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko

【右足練習しなくていいんだ】

1位 名波浩(元ジュビロ磐田ほか)

 小さい頃、僕は左利きだったので、左足の練習をずっとしていました。家の前に壁があってずっと壁打ちをしたり、公園でキックの練習をしたり。カーブとインステップのキックにすごくこだわりをもってやっていたんです。

 ただ、それをチームの練習でやっていると、所属チームや選抜チーム、カテゴリーが上がっていっても絶対に指導者の人に「右足でもやれ」と言われました。プロを目指すなら両足できないとダメだからと。だからたまに右足で練習するんですけど、全然蹴れなくて面白くないなと思いながら、また左足に戻るという感じでした。

 その時、たまたまテレビの企画で、名波さんが座りながらリフティングを何回できるかというのをやっていて、左足でずっとやっているんですよ。それで「では名波選手、右足でお願いします」と言われてやったら、数回で落としたんです。その時のひと言が「右足練習してないんで」と。

 左足のスペシャリストで、日本のトップ・オブ・トップの名波さんが、右足をいっさい練習していないんだと。もしかしたら冗談で言ったのかもしれないし、たまたまミスしてそれを誤魔化すように言った言葉だったかもしれない。

 でもそれを聞いた僕は「あ、右足で練習しなくていいんだ」と、そこからは何を言われても「僕はこの左足を磨きます」というマインドになり、コーチにもそう言うようになりました。

 人と違った武器を磨くことが、短所を補うよりもプロになるための近道だと、自分なりに解釈したのが、名波さんのそのひと言でした。大袈裟かもしれないけれど、人生を変えてくれたひと言でした。

太田宏介 
おおた・こうすけ/1987年7月23日生まれ。東京都町田市出身。麻布大学附属渕野辺高校(現麻布大学附属高校)から2006年に横浜FCへ入団。その後、清水エスパルス、FC東京、フィテッセ(オランダ)、名古屋グランパス、パース・グローリー(オーストラリア)、FC町田ゼルビアでプレー。左足の正確なキックを武器に、サイドバックやウイングバックで活躍した。FC東京時代の2014年、15年はJリーグベストイレブンに選ばれた。日本代表では国際Aマッチ7試合出場。2023年シーズンを最後に現役を引退。現在はFC町田ゼルビアアンバサダー、解説者などで活動中。

著者プロフィール

  • 篠 幸彦

    篠 幸彦 (しの・ゆきひこ)

    1984年、東京都生まれ。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスとなり、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿や多数の単行本の構成を担当。著書には『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)、『100問の"実戦ドリル"でサッカーiQが高まる』『高校サッカーは頭脳が9割』『弱小校のチカラを引き出す』(東邦出版)がある。

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