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太田宏介が選ぶJリーグ歴代レフティトップ10「あのテクニックはお化け」「人生を変えてくれた」左利き選手たち (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko

【メッシのようなドリブル】

4位 久保建英(レアル・ソシエダ)

 建英は15歳でFC東京のトップチームに来て、彼のポテンシャルの高さは十分にわかっていたうえで、あのテクニックはお化けだなと思いました。「こんな選手がいるんだ」と衝撃を受けました。

 ものすごい期待を受けながら、しっかりと進むべき道を自分で選択して、トップ・オブ・トップに登り詰めています。そのうえ、ものすごく謙虚で、上下関係もしっかりしているし、インタビューを聞いていてもすごく賢いことがわかりますよね。

 あの頃、僕が東京で試合に出られなくなってきて、建英がレギュラー組で、僕が控え組の左サイドバックで、常にマッチアップしていたんです。マジで取れなかったですね。

 ペナルティーエリアの角から1対1のドリブルを仕掛けられると、左足でシュートを打たれたくないから縦に行かせるんです。でも縦に一歩入った瞬間に切り返されて中に行かれたり、右のクライフターンみたいな形で行かれたり。とにかくバリエーションが豊富。

 それからスピードの緩急。ゼロから100に入る速さもすごいし、逆に100からゼロにストップするのも速い。体はまだ細かったから、体を当てに行くんですけど、それもスルスルとすり抜けていく。本当に若い頃のメッシのようでしたね。

3位 三都主アレサンドロ(元清水エスパルス、浦和レッズほか)

 アレさんの魅力や強みと言えば、トップスピードから上げる左足のクロスの質、足元でボールを受けてから仕掛けていくまでの間合い、スピードを生かした "裏街道"など。そういったシーンもたくさん目にしてきました。

 そのなかでも特に参考にしていたのが、トップスピードで上げるクロスの質ですね。キックやクロス練習では、通常足元にボールを止めてクロスを上げるんですけど、試合のなかではそういうシチュエーションがなかなかない。

 僕はアレさんのプレーを見て、クロスの練習では必ず前に流して、ある程度スピードに乗った状態で蹴るのを意識していました。それが自分の形として出来上がった時は、すごくうれしかったですね。おそらく、アレさんのプレーを見ていなかったら、僕はクロッサーとしてアシスト数を伸ばすことはできなかったと思います。

2位 都並敏史(元ヴェルディ川崎ほか)

 プロ3年目に都並監督の下、横浜FCでプレーさせてもらいました。都並さんの左足のどこがすごいかというと、スライディングやタックルの技術ですね。よく引退しても技術は錆びないと言われますけど、都並さんにはまさにそれを感じました。

 都並さんが監督になると決まって、まだオフ明けの1月の2週目に差し掛かるくらいに、10日間ぐらい自由参加のプレシーズン期間があったんです。当時は3月頭くらいの開幕でチームの始動も遅かったのですが、僕はその練習に毎日参加しました。

 ただ、その練習に参加する選手は少なくて、僕は毎日都並さんと4対2のパス回しとか、1対1の勝負をやっていました。あの頃は都並さんもめちゃくちゃ動けていたので。その時に、スライディングにも技術があるんだと初めて知りました。

 例えばクロス対応で、相手の右ウイングが仕掛けてきてクロスを上げられそうになった時、おそらくほとんどの左サイドバックは何も気にせず、近い足を伸ばすと思うんです。

 右足を出したり、歩幅が合ったら左足を出したり。でも、都並さんは必ず左足。並走する選手に対して、近い右足より、遠い左足のほうが0コンマ何秒遠い位置からボールにアプローチできるので、クロスが足に当たる確率がまったく変わってくるんですよね。

 それからこのスライディングで右足を出してしまうと、切り返された時の反応が遅くなる。左足を出すと、右足を畳んでいるのでそこを軸にすぐに立ち上がれるんです。

 そういうスライディングだけではなくて、マンツーマンで基礎練習を1、2時間見てくれて、左足のキックはすごく磨かれたし、体重も6kg増やして78kgにして、それが現役の間はずっとベースでした。プロとしての基礎を作ってくれた都並さんにすごく感謝しています。

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