少子化、教員不足時代の「部活動の地域展開」 注目を集める福岡での取り組みとは? (3ページ目)
【現場の実情に合ったフォーマット作りへ】
並行してアプリの制作も進めている。近年、部活動を行なう上で問題になっているのが雷への対応だ。万が一、問題が起きると部活が始まる前に天気予報を見ていたか、見ていなかったによって責任が変わる。アプリでは雨雲レーダーや落雷予報が見られる上、指導者が確認したかどうか可視化できる仕組みを整えている。
もうひとつ、地域展開する際の課題に、選手がケガをした際の対応がある。学校の部活の場合は保健の先生に対応してもらえるが、地域展開を進めると同じようにはいかない。スムーズに対応できるように現在は保険会社と連携できるシステムを開発しているという。
こうした指導者にとって痒いところに手が届く仕組みは、2年間部活動の地域展開を行ない、問題点を抽出してきたからだ。自治体がイチから作るのは難しいが、こうした現場の実情に合ったフォーマットが完成すれば、全国各地の地域展開が一気に進むかもしれない。福岡大学の取り組みすべてをマネするのは難しくても、各地域の実情に合わせて一部を参考にするだけでも地域展開は進んでいくだろう。
乾教授はこう口にする。「部活動の地域展開をネガティブに捉えると何も動けなくなるけど、今いる中学生のためだけでなく、次の世代の子どもたちのためにも移行しないといけない。そのために、できるだけ長持ちするようにシステムを作らないといけない」。
福岡大学が主体となって行なう取り組みには、今後文化部も含まれていく。
また、参加するのは学生だけではない。例えば、子どもをキッズサッカーに送り届けたお母さんが食育の講座を受ける。弟がサッカーをしている間に、お姉ちゃんは吹奏楽をしている。おじいちゃんは校内をジョギングして、汗を流している。そうした地域のスポーツと文化が共存する場と仕組み作りが求められている。
著者プロフィール
森田将義 (もりた・まさよし)
1985年、京都府生まれ。10代の頃から、在阪のテレビ局でリサーチとして活動。2011年からフリーライターとしてU-18を主に育成年代のサッカーを取材し、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿を行なう。
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