少子化、教員不足時代の「部活動の地域展開」 注目を集める福岡での取り組みとは? (2ページ目)
【指導者派遣と人材の確保】
こうした"参集型"とともに進めたのが、"派遣型"の指導だ。
部活をやっている大学生だからといって誰でも中学生を指導できるわけではないため、一定の研修を受けた学生を人材バンクに登録。中学校からのリクエストがあれば、福岡大学内にある事務局でマッチングを行ない、平日も指導ができる仕組みを整えた。参集型と派遣型の両方を同時に行なうのは全国でも珍しい取り組みで、スポーツ庁や文部科学省、各地の自治体が視察に訪れるという。
"派遣型"の地域展開を進める上で、全国各地で課題になるのが指導できる人材の確保だ。
例えば、愛知県名古屋市は2020年から小学校の部活動を民間業者に委託しているが、スポーツ未経験者の人が指導する事態が発生し、活動を見直した。福岡市と北九州市を除く福岡県全域の場合は、中学校の運動部の数は4,063に対し、外部指導員は1,861人。登録していても活動していない人が大多数で、中学生を継続して指導できる人材を確保しなければいけない。
そのために福岡大学が中心となって立ち上げたのが、先述の人材バンクを含む「福岡県アスリート人材活用コンソーシアム」だ。大学生だけでなく、社会人のアスリート人材も掘り起こすのが狙いで、活動には企業も参加。例えば、「ANAあきんど」は社員アスリートとして雇用する、ビーチバレーの選手が中学校のバレー部を指導した。ランニングソックスを製造する「株式会社Itoix(イトイエックス)」は自社が持つ陸上チームの選手が指導を行なう。
スポーツ科学部を持つ強みを生かし、福岡大学など教員養成課程を持つ大学の教授監修の下、部活動を指導できるための研修カリキュラムも作成した。教育領域、指導法領域、スポーツ領域、マネジメント領域の4項目100ユニットあるが、受講する心理的なハードルを下げるため、動画は1本4、5分程度。正解しないと次の項目に進めない仕組みを作り、指導のイロハを教える。
令和7年度からは認定書も発行する予定で、「福岡県アスリート人材活用コンソーシアム」内の人材バンクに登録されると、中学校側はどこの中学校で何回指導したのか、指導履歴もわかるようになる。現在、研修を終えた学生は福岡県アスリート人材活用コンソーシアムに加盟する福岡大学と九州共立大学の学生だけで94人おり、他に社会人もいる。
福岡市城南区から始まった取り組みは県全域にまで広がっている。2024年度は2大学のある近隣自治体に留まったが、8市町(10クラブ)のべ34人の指導者を派遣。指導者派遣を要望する自治体も多く、今後は他大学や企業を巻き込んで拠点を増やしながら、活動を広める考えだ。
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