J2からの再出発・サガン鳥栖が生まれ変わるためには? 豊田陽平が問う「砂の一粒」となって戦えるか (3ページ目)
「僕がいた当時の鳥栖のサポーターは、そうしたチームの戦いを"見守る"というよさがありました。ブーイングとかはしない。それはJリーグで、たぶん鳥栖特有の環境でした。その美学で、僕たち選手は"支えられている"と感じていました。同時に、自分は責任を感じましたね。サポーターの思いを汲み取って、"全力で走らないと"って。おかげで積極的なチャレンジもできました」
その寛容さと自立心と責任感は、むしろ最先端の関係だったと言えるかもしれない。
「地域に愛されるのがクラブの選手として必須ですが、お互いを尊重した関係が鳥栖らしさにつながっていたと思います。選手は、"自分たちが何とかする!"と思って戦っていました。『罵声を浴びせられるのもプロで、ブーイングがあって当然』って意見もあるかもしれませんが、自分は、ともに戦っている選手がひどい言葉を浴びた時は嫌だったし、怒ったこともありますよ」
いずれにしろ、争いはどこにも行き着かない。
「いいところは残さないと。それは思います」
豊田はそう言って"願い"を込めた。新たな鳥栖の戦いに注目だ。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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