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Jリーグの注目は水と油の「東京ダービー」 なのに監督の「色」が語られないのはなぜか

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

連載第27回
杉山茂樹の「看過できない」

 サッカーは監督で決まる。サッカーの中身は監督の志向で一変する。にもかかわらず、Jリーグは欧州などに比べて監督の話題が圧倒的に少ない。

 シーズン前は監督問題に触れるべき絶好のタイミングである。今季J1で新監督を迎えたチームは20チーム中8つに及ぶ。大変な変わりようである。サッカーのオリジナリティについて語るにはまたとない機会だが、シーズンを前にしたメディアの言及は弱い。

 Jリーグが発足して33年目を迎えるが、そうした意味での本場感を依然として味わうことができずにいる。SNSはともかく、公の場でサッカーの監督について語る機会が極端に少ないのだ。サッカーは監督で決まるというのに、である。

 川崎フロンターレで一時代を築いた鬼木達監督が鹿島アントラーズの監督に就任する。今季、最大の話題はこれになる。鬼木監督といえば攻撃的サッカーを信奉する監督だ。その自らの色、個性をもう少し自らの言葉で語り尽くしてほしいとは筆者の願望だが、それはともかく、ハッキリした色を備えたサッカー監督らしい監督であることは確かである。

今季から鹿島アントラーズの指揮を執る鬼木達監督 photo by AFLO今季から鹿島アントラーズの指揮を執る鬼木達監督 photo by AFLO 川崎は今季、長谷部茂利監督というテイストの異なる監督を新監督に招いた。鬼木監督の前任者である風間八宏氏も"鬼木系"だったので、10数年間続いた色を放棄したことになる。川崎というクラブの色は何なのか。サッカー的にはこれは事件だ。もっと騒がれなくてはならない交代劇である。

 監督でサッカーが一変したクラブといえばヴィッセル神戸だ。2連覇したことでそのことを問題視する人は少ないが、かつて標榜した「バルサ的サッカー」は、気がつけば吉田孝行監督の就任を機に雲散霧消した。神戸はすっかり別のカラーのチームに変身した。これもサッカー的には大事件である。しかしテレビのスポーツニュースなど大手メディアがこれを話題にすることはない。解説者、評論家が違和感を口にすることはない。非欧州的とはこのことである。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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