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Jリーグの注目は水と油の「東京ダービー」 なのに監督の「色」が語られないのはなぜか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【FC東京は変われるか】

 昨季、J1に昇格するや優勝争いを展開。最終的に3位に食い込んだFC町田ゼルビアも神戸と似たサッカーをする。より強烈なサッカーと言ったほうが適切な表現かもしれないが、黒田剛監督はそれを、吉田監督とは比較にならないほど詳しく、ある意味で丁寧に説明した。自らの色をより鮮明に打ち出そうとした。欧州的な監督の振る舞いと言えた。それで3位という好結果ももたらした。

 J1に昇格してくるまでの町田はどんなスタイルのサッカーをしてきたのか。古くからの町田のファンはこれをどう見ているのか。「勝てば官軍」とばかり、手放しで喜んだのか。そのあたりを深掘りすることがサッカーらしい報道であり、地元メディアの任務だと考える。それをSNSに委ねればその場は荒れる。既存メディアがサッカー監督の果たす役割の大きさについて語ろうとしない悲劇を、その書き込みに見ることができる。

 東京をホームにするクラブは、ご承知のように町田のほかに東京ヴェルディとFC東京がある。このうち新監督を迎えたのがFC東京だ。

 前任のピーター・クラモフスキー、その前のアルベル・プッチ・オルトネダも攻撃的サッカー系の監督ではあるが、インパクトはいまひとつ弱かった。他のチームと差別化が図れるほどではなかった。誰が監督を務めてもほぼ中庸。順位も成績もさほど変わらない、悪く言えばパッとしない変わったチームカラーである。

 しかし、松橋力蔵新監督は前任のアルビレックス新潟時代、攻撃的サッカーを披露。インパクトに富むスタイルでリーグに爪痕を残している。昨季、成績こそ16位に終わったが、監督としての評価はそれを大きく上回った。

 つまり、黒田監督率いる町田とは水と油の関係のような対照的な関係ある。町田対FC東京の東京ダービーは今季のJリーグの大きな見どころだと筆者は思うのだが、世間の反応はいまひとつ鈍い。テレビのスポーツニュースはそのあたりに迫る報道をしていない。東京ローカルと言うべき東京新聞などにも、このまさにサッカーらしい対立関係について深い取材記事を掲載したという形跡は見られない。訴求力の高い、おいしいポイントを見過ごしている。

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