J2からの再出発・サガン鳥栖が生まれ変わるためには? 豊田陽平が問う「砂の一粒」となって戦えるか (2ページ目)
【「練習で100%やるのは当たり前」】
豊田はそう繰り返し、発信してきた。それが彼にとっての「鳥栖らしさ」なのだろう。
「鳥栖というクラブは、最後までみんなであきらめずに勝利をつかむのがいいところ。一体感というか、"お互いのために"という献身性というか。それが勝利にも伝統にもつながる」
その粘り強さが、試合終盤の逆転劇「鳥栖劇場」に結びついた。土俵際の強さだ。
事実、2018年シーズンはリーグ戦で「降格間違いなし」と言われる状況から、蔚山現代から復帰した豊田がチームを決起させ、最後は5試合を3勝2分けと戦いきって残留した。2019年シーズンは最下位にまで転落したが、そこから巻き返しを見せ、降格を回避。そもそも、J1に居座り続けること自体、決して平たんな道ではなかった。
しかし昨シーズンのチームには、その粘り強さが消えていた。
「"どういうプレースタイルか"よりも、どういう姿勢で取り組んでいるのか。その土台が大事だと思います」
今回、豊田は率直な提言を口にしている。最近のプレースタイルの変化が降格理由ともされるが、クラブの旗印だった男はスタイルを支える土台の話をした。
「現場の選手や指導者は全力で戦っていたと思うんです。でも、厳しい言い方をすれば、練習で100%やるのはプロとして当たり前のことでもありますよね。それで結果が出ないなら、それ以外のところを見つめ直すしかない。たとえばピッチ外のことはどうなのかって。結果が出ないチームって、たとえばクラブハウスでスリッパを揃えなかったり、水浸しにしていたり......そういうのって、みんなでパスをつないでゴールをする、というサッカーの基本的なところで出てしまう。次の人を思えるか、というところで」
彼はプレースタイル云々よりも、信条やマインドの話をした。
「サガンは『砂岩』って言いますけど、それこそ自分も含めて、それぞれが驕らずに"砂の一粒"になって戦っていたと思います」
今でも鳥栖で愛される男は、あらためて当時をそう振り返る。
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