南雄太のプロGK生活〜光と影の26年 「20代は勘違いしていた。30歳で戦力外通告を受けて気づいた」 (4ページ目)
【高校生にいつも言っていること】
── その後の努力があったからこそ、あの経験がよかったと言えるんでしょうね。
「先のことを考えなくなったのもよかったと思います。若い頃は日本代表とか、海外移籍とかワールドカップとか、大きな目標ばかりにとらわれすぎて、今自分がやらなければいけないことにフォーカスできなかった。ただ、熊本に行ってからは目の前のことを必死にやるようになって、気づいたら44歳まで現役生活を続けることができた。自分のキャリアを振り返る時に、今はそう思えるようになりましたね」
── 現在は横浜FCのアカデミースクールで次世代のGKを指導しているほか、流経柏(流通経済大学付属柏高校)でもGKコーチを務めています。プロ選手時代の経験が指導にも役立ちそうですね。
「すでに、めちゃくちゃ役に立っています(笑)。自分の若い頃を棚に上げて、悔いのないように一日一日を大事にしないとあとで後悔するぞ、と高校生にも言っています。でもそれは、自分が経験したことだからこそ言えると思うので、若い子を指導していて、やっぱり自分がプロ選手を経験していてよかったと思えることが多いですね」
── 最後に、これからプロを目指すGKに指導者としてアドバイスをお願いします。
「今指導している高校生にもよく言うんですけど、たとえばGKは10回同じシチュエーションがあったら、サボることなく10回とも同じようにポジションを取らなければいけないので、1回1回のプレーにこだわれるかどうかが大事だということ。ということは、練習の1本1本をどれくらいきちんとできるか、ということに行きつくわけです。
だから、毎日の練習で1本1本にこだわれない選手は絶対にいいGKにはなれない、ということを伝えたいですね。10回のうち1回でもサボってしまうと、試合の大事な場面で1本に泣いてしまうことになり、結局は自分が後悔することになります。
僕は、若い頃にそれができなかったからダメになってしまった。早い段階でそれに気づいていればって思っているので、これからもそのことは伝えていきたいと思います」
【profile】
南雄太(みなみ・ゆうた)
1979年9月30日生まれ、東京都杉並区出身。静岡学園時代に高校選手権で優勝し、1998年に柏レイソルへ加入。柏の守護神として長年ゴールを守り続け、2010年以降はロアッソ熊本→横浜FC→大宮アルディージャと渡り歩いて2023年に現役を引退。1997年と1999年のワールドユースに出場し、2001年にはA代表にも選出された。現在は解説業のかたわら、横浜FCのサッカースクールや流通経済大柏高、FCグラシオン東葛でGKコーチを務めている。ポジション=GK。身長185cm。
著者プロフィール
中山 淳 (なかやま・あつし)
1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)
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