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38歳になる都倉賢が「生涯現役」宣言 「経験って力」「自分の心がダメにならない限り、きっと点は取れる」 (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

 でも草津での経験がある分、また、この20年で、選手としての本質であるサッカーができる幸せを僕なりに見つけてこられたこともあって、何を目の前にしても動じないというか。なんなら、川崎(フロンターレ)からJ2の下位チームに行って、『何くそ』と思って戦っていた当時の自分が蘇って、ここからまた『這い上がってやる』という気持ちにさせられている。経験って力ですね」

 その盛岡は現在、最下位。5月上旬には監督が交代するなど、苦境に立たされているが、都倉自身のサッカーへの思いに揺らぎはない。相変わらず「サッカーって最高だなって思う毎日」のなかで、さらに欲を膨らませている印象すらある。

「毎日、もっとこうすればいいプレーができるかもなって発見ばかりですから。もちろんプロである以上、自分が楽しければそれでいいとは思っていません。FWとして点を取ることにもこだわっているし、この年齢でチームに在籍している責任も当然、感じています。

 でも、変な言い方だけど、この歳になると自分の心がダメにならない限り、きっと点は取れるし、結果も残せるんじゃないか、と。それは、札幌時代のチームメイトで、尊敬する偉大な先輩、(小野)伸二さんとイナさん(稲本潤一/南葛SC)が教えてくれた。真っ直ぐにサッカーと向き合って、いろんなことにチャレンジして、いろんな失敗もしながらサッカーを楽しむことがサッカー選手としての原点だ、って」

 そして、その思いがある限り、彼は現役選手であり続けるのだろう。

「サッカーの王様、ペレが言っていたんです。自分は一番ゴールを取った選手ではなく、一番シュートを外した選手だ、と。『シュートをたくさん外したから、そこから学んで、ゴールも取れた。人は"ゴール"にばかり注目するけど、その影ではゴールの10倍、20倍のシュートミスがあるんだ』と。

 人生も同じだと思うんです。いろんな選択の連続で、時に選択したことがうまくいかないことも、失敗することもある。でも、それってチャレンジしたから出る答えなんですよね。

 だから僕はこの先も、自分が信じたこと、やりたいと思ったことにチャレンジし続ける自分でいたい。グルージャも、今は苦しいところにいるけど、監督が交代してこの数週間で確実にチームは変わったし、競争力も出てきているのは間違いないので。この戦いを自分たちで正解にするために、自分たちを信じて全力でやりきるだけだと思っています」

 そう話す彼は、6月16日、38回目の誕生日を迎える。新しい年への抱負を尋ねたら「生涯現役」と目をギラつかせた。その熱のこもった歯キレのいい言葉は、まるで、この先のキャリアへの宣戦布告のようだった。

(おわり)

都倉賢(とくら・けん)
1986年6月16日生まれ。東京都出身。川崎フロンターレU-18を経て、2005年、在学中の慶應義塾大学を休学してトップチーム入り。2008年にJ2のザスパ草津(現ザスパクサツ群馬)に期限付き移籍。翌年、同クラブに完全移籍し、2010年にはヴィッセル神戸に完全移籍。以降、北海道コンサドーレ札幌、セレッソ大阪、Ⅴ・ファーレン長崎でプレー。持ち味となる高さを活かして、各クラブで活躍した。そして今季から、J3のいわてクルージャ盛岡に加入した。

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