中村憲剛はなぜS級ライセンス研修でカナダへ? 2年後のW杯開催地で見た新世界

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei

中村憲剛がS級ライセンス取得の海外研修先に
「カナダ」を選んだ理由(前編)

 JFA(日本サッカー協会)公認のS級ライセンス取得を目指す中村憲剛氏が、海外研修の地に選んだのはカナダだった。なぜ、世界の最先端を行くヨーロッパではなく、サッカーに馴染みが薄い国へ研修に赴いたのか。

 その背景には、旧知のふたりの存在があった。川崎フロンターレの元スタッフで現在はカナダでサッカー関連の事業を行なう高尾真人氏と、同じく元フロンターレで現在は中村さんの研修先となったパシフィックFCでクラブスタッフを務める田代楽(ガク)氏である。

 今回の研修に関わったふたりと憲剛氏に、海外研修の舞台裏と、2年後にワールドカップを控えるカナダのサッカー事情を訊いた。

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パシフィックFCのファンと積極的に交流した中村憲剛氏 photo by Pacific FCパシフィックFCのファンと積極的に交流した中村憲剛氏 photo by Pacific FCこの記事に関連する写真を見る── そもそも、S級ライセンスの海外研修はどの国のクラブでもいいのでしょうか。

中村「そうですね。場所に関しては『1部であればどこでもいい』ということだったので、自分の交友範囲のなかで調整して、かかる費用はすべて自分で出して行くことになります。なので、知っている人だったり、研修希望先のクラブと関わりの強い知人がいるところがいいと考えました。

 そういう人がいれば、しっかりとクラブの中まで見られるじゃないですか。その期間を"お客さん"としてではなく、そのクラブのスタッフに近い存在の人間として接してもらえるチームがいいなと考えて、それが叶えられる行き先を選定しました」

── カナダのパシフィックFCを選んだのは、高尾さんの存在があったからですか。

中村「そうですね。高尾はフロンターレのスタッフとして働いていたんですが、辞めたあとにカナダに渡って、カナダと日本をつなぐ留学支援の事業を立ち上げたんですね。それでまだ現役だった2019年のオフに会いに行こうと思い立って、家族で高尾のいるカナダのビクトリアまで会いに行ったんです。

 ちょうどその時、高尾から『カナダの国内リーグが立ち上がるタイミングで、ビクトリアにもチームができました』ということを聞いて、スタジアムまで連れていってもらったんです。街の雰囲気もよかったし、人もみんな優しくて、ビクトリアですごくいい家族の思い出が作れたんです。とてもいい印象が残ったまま日本に帰りました」

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著者プロフィール

  • 原山裕平

    原山裕平 (はらやま・ゆうへい)

    スポーツライター。1976年生まれ、静岡県出身。2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。

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