町田ゼルビアのオ・セフンが欧州ではなくJリーグを選んだ理由 将来は「韓国代表でプレーしたい」 (3ページ目)

  • 吉崎エイジーニョ●取材・文 text by Yoshizaki Eijinho

【現代サッカーのイメージに近い選手と見られたい】

 最後にひとつ、気になっていたことを聞いてみた。

 町田の今のサッカーは、パワーやスピードを押し出していて、それは既存の"韓国スタイル"にも見える。そこにあなたは前線のピースとしてフィットしようと努力している。韓国人だからこそ、合う。そんな面があると思いますか、と。

 逆に聞かれた。「韓国サッカーはパワーとかスピード、という風に見えますか?」と。

 そうだ、と答えた。ただ、ここ最近の韓国サッカーは、技術志向のように感じる。はっきり言って昔のほうが日本にとって怖かった。違いがあったから。今の町田には似たものを感じる。Jリーグのなかで違いを出していて、そのスタイルが際立っているから、強いんじゃないかと。

 オ・セフンの答えはこうだった。

「昔は、もちろん精神力、力で勝てるサッカーもありましたが、最近は頭を使わなければならないでしょ? 力とスピードをよりうまく使うためには、頭が一番良くなければならないと思うので......。もちろん一生懸命走るのは大事だけど、それよりもより賢く走ること。より多くのチャンスを作ってゴールを決めること。韓国の選手としての特徴より、現代サッカーのイメージに近い選手。そういう風に見られたいです」

 2024年のMZ世代コリアンJリーガーの考え方か。

 3月30日のJ1第5節での町田での初ゴールの際には、ヒーローインタビューでフィアンセへの感謝を伝えて見せた。ヨーロッパ移籍も、大韓民国国家代表への道のりも、すべて今の町田での日々から始まる。やらなければ道は拓けない。

 オ・セフンは自ら決断してギリギリの日々を過ごす。過去から未来をつなぐ場として日本が存在するのだ。
(終わり)

オ・セフン 
呉世勲/1999年1月15日生まれ。韓国仁川広域市出身。ヒュンダイ高校を卒業後2018年蔚山現代(現蔚山HD)に加入。2019年には牙山ムグンファ、2020年からは尚州尚武に所属し、2021年途中から蔚山に戻ってプレー。2022年に来日し清水エスパルスでプレー、2024年からはFC町田ゼルビアに移りプレーしている。2019年U-20W杯で準優勝した韓国代表メンバー。

著者プロフィール

  • 吉崎エイジーニョ

    吉崎エイジーニョ (よしざき・えいじーにょ)

    ライター。大阪外国語大学(現阪大外国語学部)朝鮮語科卒。サッカー専門誌で13年間韓国サッカーニュースコラムを連載。その他、韓国語にて韓国媒体での連載歴も。2005年には雑誌連載の体当たり取材によりドイツ10部リーグに1シーズン在籍。13試合出場1ゴールを記録した。著書に当時の経験を「儒教・仏教文化圏とキリスト教文化圏のサッカー観の違い」という切り口で記した「メッシと滅私」(集英社新書)など。北九州市出身。本名は吉崎英治。

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