川崎フロンターレに8年 韓国人GKチョン・ソンリョンが日本の生活で驚き「とにかく速くという考えの母国では見たことがない風景でした」 (3ページ目)

  • 吉崎エイジーニョ●取材・文 text by Yoshizaki Eijinho

【負けたあとの反応に韓国との違いを感じた】

 そうやって足を踏み入れた日本の地。2016年2月27日のサンフレッチェ広島戦でJリーグデビューを果たした。

 来日後、そこまでの過程でチョン・ソンリョンは「韓国と日本のギャップに苦しむ」といった経験があまりなかった。ほかの韓国人選手たちは「韓国より緩やかな先輩・後輩の関係」や「戦術・サッカー観の違い」に苦しむものだが、そういった点は口にしない。

「韓国でのプロ初期に3年間全く試合に出られなかった経験があり、また代表チームでは様々な監督の下でもプレーしました。多くの状況を経験したので、少々のことは受け入れる、というマインドができあがっていたのだと思います」

 もともと言葉が多いタイプではないし、本来のプレースタイルも安定感で勝負するタイプ。守備ラインの選手たちとの意思疎通のため、初期に覚えた日本語は「自分の視界に入らないで」「見えない」といった内容だった。

 強いて文化のギャップを感じた点を挙げるとしたら、「敗戦のあとの日本の選手たちの反応」だった。

「韓国では試合に負けたあと、本当に重い雰囲気になるんです。反省して、結果を噛み締めようとする。負けた試合のあと、翌水曜日や木曜日に合宿をするチームもありました。でも日本の選手たちは負けたあとの切り替えが早いのには少し驚きましたね。試合後、友だちに電話して気持ちを切り替えるような選手もいて。

 勝った試合でも同じで、すぐに次の試合のことを考える。いまでは自分自身も『負けのストレスは抱え込まず、早く気持ちを切り替えたほうがいい』と考えられるようになりました」

 日本にはそういう考え方もあるんだな、と解釈したのだ。むしろ、日本文化の特徴を強く感じたのはピッチ外での出来事だった。

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