古橋亨梧のイチオシ「大橋祐紀って誰だ?」 得点ランク日本人3位タイの湘南FWが覚醒した理由

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

 人知れず味わってきた悔しさと痛みと、歯痒さと苦悩を、ついに結果へつなげた。

 湘南ベルマーレの大橋祐紀である。プロ5年目の今シーズンは自身初のふたケタ得点を記録し、チームのJ1残留に貢献した。

 最前線で身体を張り、味方を使いながら自ら持ち出し、左右両足から力強いシュートを繰り出す。ハードワークを身上とするベルマーレの選手らしく、前線からプレスを仕掛ける。献身的なその姿勢が、観る者の胸を揺さぶる。リーグ残り1試合の時点での13ゴールは、得点ランキングの6位タイ(日本人では大迫勇也の22得点、細谷真大の14得点に次ぎ、鈴木優磨と並ぶ3位タイ)となる。

大橋祐紀とはどういう人物なのか photo by Sano Miki大橋祐紀とはどういう人物なのか photo by Sano Mikiこの記事に関連する写真を見る 結果に対する強いこだわりを持って臨んだシーズンだった。

「去年の終盤はメンバー外の試合が多かったんです。試合に出ても途中出場が多く、プレータイムは900分に満たないぐらいでした。危機感というか、崖っぷちというか、とにかく自分のなかでどうにかしないといけないという思いがありました」

 2022年シーズン後のオフは、カタールワールドカップ開催の影響でいつもより長かった。大橋はトレーニングに多くの時間を割き、体重を2キロから3キロほど増やした。

「選手なら誰もがそうだと思うんですが、自分の身体をどうするかというのは、ずっと試行錯誤しています。過去には身体のキレを出したくて、体重を軽くしたシーズンもありました。今回は2キロほど増やしたままプレシーズンに入ったんですが、それでも重さを感じずに動けました。プレシーズンでも点を取ることができていて」

 いきなり結果を残した。サガン鳥栖との開幕戦で、自身初のハットトリックを成し遂げる。ベルマーレ所属選手としては、実に25年ぶりの記録達成となった。

「鳥栖戦でいいシーズンの入りができたことで、自分のなかでも気持ちの余裕が生まれたと思ったのですが......」

 3節の川崎フロンターレ戦で、右太もも肉離れのケガを負ってしまう。全治まで10週間と診断され、11試合連続でメンバー外となった。

「シーズンの入りがよかったけれど、すぐにケガをしてしまったので、プラスマイナスゼロみたいなところはありますけど、振り返ればその離脱期間に、また身体に向き合うことができたと思います。自分のキャリアがずっと右肩上がりにいくとは思っていませんので」

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