湘南ベルマーレのモロッコ生まれFWタリクが「絶対に平塚に住みたいと思った」理由 (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi

【故郷のモロッコと日本は似ている面がたくさんある】

 そんなふうにして緊張を解きほぐす必要もなく、長いインタビューが始まった。まずはこのシリーズ恒例の日本に来た理由から。

「あの時、僕は前所属先との契約が満了して、フリーエージェントだった。欧州のクラブからもいくつか話が来ていたんだけど、湘南からオファーをもらった時、特別な機会だと思ったよ。そして妻に、これが僕の最後の所属クラブになるかもしれないから、君が選んでいいよと言ったら、彼女は『湘南!』と即答したよ。異論はまったくなかった。なぜなら、僕も妻も未知の世界、とりわけ日本にすごく興味があったからね」

 タリクはそれまで、日本を訪れたことが一度もなかった。ただし幼少期に、私たちの国が世界に誇るエンターテイメントに、すっかり虜になっていたという。

「僕はモロッコで生まれ、幼少期と少年時代をそこで過ごした。モロッコでも日本のアニメが放映されていて、『ドラえもん』や『タイガーマスク』『キャプテン翼』をいつもすごく楽しみにしていた。ちなみに『キャプテン翼』は、『キャプテン・マジド』というタイトルだった。アラブ系の国で放映されるアニメは、まずシリアに集められてそこから配給されていたようなんだけど、おそらくそこで題名が決まるみたいだね」

 それ以外には性能の良い電化製品など、日本に関する典型的なことしか知らなかったが、実際に来てみると、彼が育ったモロッコと似ている面がたくさんあったという。

「モロッコでも、年上の人を敬うことや、自然を大事にすること、物事を清潔に保つことがとても重視されているんだ。それからキャプテン翼の世界にもあったように、チームの仲間がそれぞれに支え合うことも。誰であろうと自分以外の人をリスペクトする日本の文化は僕の性に合っているから、まったく問題なくスムーズに適応できたよ」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る