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湘南ベルマーレはなぜJ2に落ちそうで落ちない? 元Jリーガー坂本紘司社長が語る「サッカーの世界基準」を読み解く力 (3ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei
  • photo by Getty Images

【70%守備で走ってワンチャンスで決めろは酷】

「ボールを追いかけてばかりの1試合120キロの走行距離と、ボールを奪って意図的に攻撃できている120キロの走行距離は、当たり前ですがまったく違います。試合内容が変わります。

 たくさん走るとか、何度もスプリントできるからすべていいのではなく、いつ走るのか、どこに走るのか。質の高い走力で、リーグ上位の走行距離やスプリントなどを記録するようになれば、もっともっと強くなれるはずです」

 J1に定着する過程では、ハイプレスからのショートカウンターを特徴としてきた。しかし、J1の上位チームと安定して競り合っていくには、ビルドアップからも相手を崩す必要があり、セットプレーも得点パターンとしなければならない。

「ポゼッションサッカーをしたいわけではないんです。質の高い走力にも関連しますが、点を獲るための精度を高めるためには、相手にボールを渡さない時間帯をもう少し増やすのは絶対に必要です。

 3:7の割合でボールを握られれば、守備で疲弊します。70パーセントの割合で守備に走っていて、ワンチャンスを決めろというのもちょっと酷(こく)なところがあるだろう、と。マイボールにする時間を作る、簡単に失わないというのは、J1で勝つためには必要な要素にもなりますので」

 できることを増やそうとしているからと言って、結果に目をつぶるわけではない。坂本の表情が厳しくなる。目の前には誰もいないが、彼は頭を下げた。

「2022年は2018年以降で最高の成績の順位で終え、それをベースに上積みをしていこうと考えました。ただ、相手が我々を研究してくるのは当然で、湘南はこうやってくるからこうしよう、というゲームが今年は増えた印象です。いい成績で終わった翌年にどういう戦いが待っているのかについて、私の想定が甘かったと反省しています」

 ピッチ内では変化を求めつつ、編成の軸はブレない。獲得のオファーが届いた選手は、タイミングを考慮しつつ送り出すというものだ。

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