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湘南ベルマーレはなぜJ2に落ちそうで落ちない? 元Jリーガー坂本紘司社長が語る「サッカーの世界基準」を読み解く力 (2ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei
  • photo by Getty Images

【湘南の顔として活躍した坂本紘司が社長に就任】

 代表取締役社長の坂本紘司は「進化するためのトライを、いつかしなければいけないとずっと考えてきました」と言う。湘南で2000年から13年間プレーし、J2降格とJ1昇格を経験してきた彼は、現役引退とともにフロントスタッフ入りして営業本部長やスポーツダイレクターを歴任してきた。今年1月1日付で代表取締役GMとなり、6月30日に現職に就いた。

「我々のチームには、すごく走るとか、相手ボールになったらすべて奪いにいく、といったイメージがあるかもしれません。それは相手にとってすごくイヤだと思います。ただ、5年前や10年前に比べると、GKも使いながらのビルドアップは洗練され、進化しています。

『前からいけば取れる』『相手が蹴ってくれてタッチを割ってマイボールになる』『蹴ったボールを回収できる』といった時代ではない。走力という特徴があるのだから、状況を見ながらプレーできるようになれば、もっと強くなるというのが考え方の根本にあります」

 現代サッカーにおいて「走力」はオプションではなく、標準装備されるべきものである。中位から下位のチームが上位に対抗するための武器、ではなくなっているのだ。坂本が続ける。

「我々には『ひたむきに走る』『ハードワークする』という色があり、それがJリーグのなかで尖っていた部分だと思うんです。けれど、世界的な基準としてどのチームも走るようになってきていて、我々の色として尖らなくなっている。他クラブも走っているからこそ、走力を生かすことを前提にしてできることを増やすのは、避けては通れないと考えます。

 他チームが当たり前にできていることができれば、走力という強みがさらに生かされ、もっと勝っていける。それが上位進出につながると信じて、ここ数年は今までトライしなかったことを少しずつやってきています」

 これまで湘南が強みとしてきた1試合の走行距離やスプリントの回数は、チームや個人のパフォーマンスをすべて映し出すものではない。数字だけでは読み取れない現実にも目を向けることで、走力の実効性を高めていくのだ。

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