元鹿島FW田代有三はオーストラリアで引退後になぜ現地で起業? 日豪「いいとこどり」とは (4ページ目)

  • 石井和裕●取材・文 text by Ishii Kazuhiro
  • photo by Ishii Kazuhiro

【オーストラリアから見た日本サッカーは?】

 コロナ禍の行動制限が解除され、日本とオーストラリアの交流が活発化している。過去4シーズンのJ1を横浜F・マリノスにおいて2人のオーストラリア人監督(アンジェ・ポステコグルー/現トッテナム監督、ケヴィン・マスカット/現横浜FM監督 )が制し、日本でも、かつてないほどオーストラリア・サッカーへの注目が集まっている。

 オーストラリアで生活する田代さんは、今の日本サッカーを南半球からどのように見つめているのだろう。

「日本の選手はうまいです。でも、攻撃でリトリートしすぎかな。ちょっと守備者に寄せられただけでボールを後ろに戻したら面白さが感じられなくなると思います。オーストラリアのサッカーはレベルが高くないディビジョンでも、ちょっと崩しながら縦に速い。ファンは、このスポーツのダイナミックな動きを見に来ています。

 同じAFCの日本とオーストラリアの双方のスタイルがミックスして『いいとこどり』できれば、共に世界と対等に戦えるレベルになる。両国のサッカーにとっても僕にとっても、大きな可能性を持っている日本とオーストラリアの関係だと思っています」

 改めて話を聞くと、オーストラリアで暮らす田代さんの生き方は「変わっている」。おおらかな空気が漂いながら高層ビルの立ち並ぶスタイリッシュなシドニーの街並みにマッチして、40歳を超えた今もみずみずしく感じる。国境を飛び越えて人と人とをつなげる田代さんの挑戦が次のステップに進んだら、きっと南半球から日本にニュースが届くだろう。

田代有三 
たしろ・ゆうぞう/1982年7月22日生まれ。福岡県出身。福岡大学時代に特別指定選手として大分トリニータとサガン鳥栖でプレー。2005年鹿島アントラーズに加入し、FWとして活躍。モンテディオ山形、ヴィッセル神戸、セレッソ大阪でもプレーし、Jリーグ通算248試合出場65ゴールの記録を残した。日本代表国際Aマッチ出場3試合。2017年にオーストラリアへ移籍し翌年に引退。現在はシドニーでサッカースクール事業を行なっている。

プロフィール

  • 石井和裕

    石井和裕 (いしい・かずひろ)

    1967年、東京都生まれ。WE Love 女子サッカーマガジン主筆。2006~2007年モックなでしこリーグ冠スポンサー等スポンサー担当者。FIFA女子W杯は2007、2011、2019、2023年を現地観戦。著書『横浜F・マリノスあるある』『サポーター席からスポンサー席から: 女子サッカー 僕の反省と情熱』『日本のサポーター史』等。なでしこリーグ公式サイト『日本全国なでしこリーグの街を訪ねて』『なでしこリーグのSDGs もう一つのゴール』連載。PRSJ認定㏚プランナー。

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