過酷なJ1残留争い 尻に火が付いている3チームのサバイバルを水沼貴史が考察 (4ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

【守備面での補強が大きい湘南】

 湘南はここまで複数失点が多く、守備の立て直しが急務だったと思うが、7月に鹿島アントラーズからキム・ミンテを獲得したのは大きかったと思う。鹿島で出られなかったことで相当悔しい思いをしていたのだろう。湘南の最終ラインで、大声を張り上げながらリーダーシップを発揮している。

 また、Jリーグ初挑戦のGKソン・ボムグンにとってもキム・ミンテの加入は非常に助かっていると思う。これまでも最低限のコミュニケーションは取れていたとは思うが、言葉がわかる選手が最終ラインに一人いるだけで連係はまったく違うはずだ。

 しかも日本での経験が豊富な先輩で、わかってくれるという安心感があって、リーダーシップを取ってくれている。第22節でサンフレッチェ広島に勝ったあと、2人で抱き合って喜んでいた姿を見ると、2人の信頼関係の深さを感じることができた。

 ソン・ボムグンだけでなく、大野和成も思いきり競り合いに出ていけるのは、キム・ミンテが後ろにいてくれるからだろうし、大野が真ん中から左センターバックにずれたことで、杉岡大暉が本来の左サイドのポジションで躍動できるはず。

 それから田中聡の復帰も間違いなく大きい。守備の強度はもちろん、ボールを捌く能力も頼りになるし、彼が真ん中にいることで周りはだいぶ変わってくる。まだ彼本来の出来ではないが、これから徐々に調子を取り戻していくだろう。

 それと町野修斗がドイツ2部のキールへと移籍したあと、清水エスパルスからディサロ燦シルヴァーノを獲得した。大橋祐紀と2人で、どれだけエースの抜けた穴を埋められるか。いずれにしてもこの仕切り直しのタイミングで第6節以来の勝利をホームで挙げられたのは、チームの士気を上げるうえでこれ以上ないものだろう。

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