横浜F・マリノス、涙の劇的勝利で首位奪取 アディショナルタイムの2ゴールが生まれた理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

【流れを変えた水沼宏太と宮市亮】

 その後、横浜FMは反撃に転じるが、前線が孤立し、点が線にならない。後半28分にも、寄せきれずにクロスを上げられると、フロートにヘディングで逆転弾を決められる。

 横浜FMは2-3とリードを許し、窮地に立たされている。

 しかし、王者たる所以は、80分を過ぎてからの戦いにあった。水沼宏太、宮市亮というふたりが交代でピッチに立つと、形勢は一変した。昨年のE-1選手権の日本代表メンバーふたりを切り札に使えるところが、王者の底力だ。

「絶対に試合の流れを変えよう」

 そう誓い合ったふたりが、ギアを入れる。

 まず出足の鋭い守備を見せ、後半42分、水沼が相手ボールに食らいつく。さらに宮市が続けてプレスにいくと、相手DFがたまらずコントロールを乱し、これを奪いきった。相手DFと入れ替わり、スピードを上げようとしたところでファウルを受け、レッドカードを誘発。ひとり少ない状態にした。

 これで優位に立った横浜FMは、柏を押し込む。サイドでポイントを作って、常に3、4人が近距離でボールに絡み、パスを出し引きしながらスペースと時間を作り、崩す。突っ込みすぎ、攻め急いでいた攻撃にリズムを与えた。

 そしてアディショナルタイム、水沼のクロスをアンデルソン・ロペスがヘディングで叩き込み、同点にした。

「右で人を集めながら、ためを作ったら、必ず崩せると思っていたました。ナベ(渡辺皓太)がよく落としてくれましたね。クロスは感覚で上げて。ロペスには『必ずチャンス作るから、(心を)切らすな。絶対に大丈夫だから』って励ましていました。あいつだからこそ、あのボールを決めてくれたと思います」(水沼)

 これで一気にスタジアムは沸きたった。自然と勢いが出る。王者の勝利を信じる空気に満ちた。終了間際、果敢に縦パスを差し込むと、それがこぼれても人が湧き出し、ゴールに迫る。その怒涛こそ、アンジェ・ポステコグルー監督以来、横浜FMの攻撃サッカーの原型と言える。

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