日本代表初招集、京都サンガ・川﨑颯太の魅力は「ボールの動きに細やかに反応する軽快さ」だが、試合出場はあるか

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 アルビレックス新潟対京都サンガ戦。新潟にとってこの試合はシント・トロイデンへ移籍する伊藤涼太郎のラストマッチだった。中心選手であり人気の選手のラストゲームとあり、ホームのデンカビッグスワンスタジアムはふだんの倍近い3万人超の観衆で埋まった。

 両軍ともシーズン当初は好調で、たとえば第8節の時点では京都が7位だったのに対し新潟は8位と、いずれも一桁順位を維持していた。ところがこの一戦を前にしたそれぞれの順位は、新潟13位、京都14位でチーム状態はよくなかった。

 にもかわらず、日本代表の森保一監督は、エルサルバドル戦(15日)、ペルー戦(20日)のメンバーに、京都から川﨑颯太を招集している。選ばれた国内組はわずか4人。欧州組のみから選出した、2022年10月、11月に行なわれた4試合を除けば、これは国内組の最少記録になる。

 サンフレッチェ広島2人(大迫敬介、川村拓夢)、名古屋グランパス1人(森下龍矢)、京都1人という内訳になるが、広島、名古屋の現在の順位は5位と2位。Jリーグで現在調子のいいチームに所属する選手を選出することに大きな違和感はないが、14位の京都から21歳の若手を初招集したとなると、文字通りの抜擢である。驚きというか、監督の強い意志を感じずにはいられない。

日本代表に初招集された川﨑颯太(京都サンガ)日本代表に初招集された川﨑颯太(京都サンガ)この記事に関連する写真を見る 試合を優勢に進めたのは新潟だった。しかし先制したのは京都で、前半28分、CKからFW豊川雄太がワンチャンスをものにした。すると過去8戦勝利がない(1分け7敗)京都は、勝ちを欲するあまりだろうか、布陣を4-3-3から5バック気味の3バックに変更。プレッシングから一転、うしろを固める作戦に出た。攻める新潟、守る京都の構図を鮮明にさせながら、試合は終盤へと向かっていった。

 活躍が目立ったのは伊藤涼太郎だった。今季が始まるまでJ1リーグの出場試合数はわずかに11。知る人ぞ知る隠れた存在だった25歳の選手が、いきなり脚光を浴びる例は稀である。実際、伊藤は海外組と呼ぶに相応しい、現在のJリーグのレベルを超えるプレーを披露した。なぜこれまで不遇だったのか。サッカーという競技の不思議さをあらためて思い知らされる活躍ぶりだった。

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プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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