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Jリーグ30周年で福田正博が考えた試合観戦の価値向上「スタジアム改革は避けられない課題」 (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

【スタジアム改革は避けられない課題】

 その点において、スタジアムの改革は避けられない課題だと思う。現在国内のスタジアムの多くは、2002年のワールドカップ開催のためにつくられたものだ。人口規模とは関係なく大観客収容のスタジアムになっているため、Jリーグの試合では、その町の規模を考えれば多くのサポーターが詰めかけているにもかかわらず、空席が目立つケースもある。これでは観客で賑わっている感じは伝わっていかないだろう。

 イングランドのプレミアリーグが、いまの成功を手にした要因のひとつに、スタジアム改革があったという。ピッチとスタンドの距離は近く、スタジアムの収容人員も町の規模に応じたサイズにつくりかえられた。これによって「自分の町のチームをスタジアムで応援したい」サポーターが常にスタンドに溢れた。

 その光景を見た人たちも「スタジアムでサッカーを観たい」とチケットを買い求めようとするが、客席には限りがある。そのため、スタジアムのチケットの価値は高まり、チケットを手にできない人たちのテレビ観戦数が増える構図ができあがったそうだ。

 翻ってJリーグはと言えば、パナソニックスタジアム吹田のような世界に誇れるサッカー専用スタジアムも生まれているが、その数はまだまだ物足りない。Jリーグで圧倒的な人気を誇る川崎フロンターレでも、横浜F・マリノスでも、観客席とピッチとの距離は遠い。もし彼らのスタジアムの観客席とピッチの距離感がもっと近かったなら、スタジアムの一体感はさらに強まり、より多くの人たちが足を運んでみたい空間をつくり出しているはずだ。

 これまでの施策が間違っていたと言いたいわけではない。その時代ごとに最適な環境へと形を変える必要があるということだ。2002年の時点ではワールドカップ成功のために大観客収容が最優先され、ピッチとの一体感やアクセスのよさという条件は後回しにされていた。ただ、今後は解決しなければいけない課題になるだろう。

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