中村俊輔は「チェスの名手のよう」。GKブローダーセンが語った思い出「ボールを止めたことよりも、ネットから取り出すことのほうが多かった」 (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

【日本の環境が僕のパフォーマンスを改善してくれた】

 またそのおおらかな性格と優しい笑顔、熱いジェスチャーでサポーターのハートも掴んでいる。そんなブローダーセンにファインセーブの秘訣を訊くと、照れた笑顔でこう答えた。

「お褒めの言葉をどうもありがとう。特にこれというのはないんだけど、あえて言うなら、常にどんなことからも学ぼうとしていて、いいものを取り入れようとしていることかな。

 僕の第一のストロングポイントは、パワーだと思う。でも常にパワフルにプレーすればいいというわけではないよね。力を抜くべきところでは抜き、入れるべきところで入れる。これが大事なんだ。その意味で、日本の穏やかな環境やカルチャーは、僕のパフォーマンスを改善してくれたと言える。

 以前の僕は、パワーに頼りすぎていたところがあったけれど、日本の落ち着いた空気によって、パワーの出しどころを考えるようになった気がする。そうすることによって集中力が増し、パワーをより効果的に発揮できるようになったと思うんだ。

 また考え方も変化したような気がする。日本に来てからは、試合に出る時も、勝敗について過度に考えなくなった。リラックスして自分の仕事を全うすることを第一に考えている。勝利を求めすぎると、緊張したりして、逆に本来の力を出せなくなったりするからね。勝ちたいのは当たり前だけど、そればかりを考えると、うまくいかなくなることが多い気がするよ」

 ハートは熱く、頭は冷静に。技術や運動能力、戦術を身につけたあと、その先の差を生み出すのは、メンタリティだとブローダーセンは信じている。平静なマインドを備えていれば、周囲の状況を落ち着いて把握でき、自分が次に何をすべきかがわかるものだからだという。

「GKもそうだけど、フィールドの選手にはもっと当てはまるだろうね。どんな状況にも冷静でいられる選手は、アドバンテージを持っていると思う。相手よりも先が読めるはずだし、自信にもつながるはずだからね。

 おそらくその究極の形が、リオネル・メッシだと僕は思う。もちろん、技術もスピードも超一級だけど、彼はフットボールを誰よりも知っているんだ。試合の流れが手に取るようにわかるのだろうね。だから、誰も彼を止められないんだと思う」

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