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横浜F・マリノス開幕戦勝利の陰の立役者は角田涼太朗。希少な「右SBもできる左利きCB」は要注目

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishuku Torao

 アウェーの横浜F・マリノスが川崎フロンターレに1-2で勝利した2023シーズンのJ1リーグ開幕戦。0-2で迎えた後半2分だった。川崎左SB佐々木旭のシュートを横浜FM左CB角田涼太朗がブロック。その跳ね返りを川崎の左ウイング、マルシーニョがシュートに持ち込むも右ポストをわずかに外れ、スコアは動かなかった。

 川崎は後半のアディショナルタイムにMF橘田健人が佐々木からのボールを押し込み1点差としたが、時すでに遅し。後半2分のワンプレーが勝負を分けたハイライトシーンだったと見る。この段で1点差にしておけば、試合の行方はわからなかった。

開幕節の川崎フロンターレ戦で勝利に貢献した角田涼太朗(横浜F・マリノス)開幕節の川崎フロンターレ戦で勝利に貢献した角田涼太朗(横浜F・マリノス)この記事に関連する写真を見る 左ウイングのマルシーニョは、これ以外にも多くのチャンスを創出。前半だけでも最低5回、横浜FMの右SB松原健を慌てさせていた。

 マルシーニョが川崎に加わったのは2021年シーズンの後半。欧州に渡った三笘薫の後任として期待されたが、当初はその穴を埋められずにいた。軌道に乗り始めたのは昨季の途中から。終盤はウイングプレーのみならず得点シーンに関わる機会も増やしていた。

 足もとに吸い付くようなドリブルと相手の逆を取るフェイントで縦突破を図る三笘に対し、マルシーニョはとにかくスピードで勝負する。推進力満点。直進性の高いウイングだ。

 その突破力は、川崎のストロングポイントと言えるまで昇華していた。後半2分、マルシーニョが先述したシュートを決め、同点、逆転と進んでいればマン・オブ・ザ・マッチは彼で決まりだった。少なくとも後半のある時まで、マルシーニョは両軍選手のなかでもっとも試合にインパクトを与えた選手だった。

 川崎のストロングポイントが左ウイングであるのに対し、横浜FMは対峙する関係にある右SBを泣きどころにしていた。先発した松原は、1週間前に行なわれた富士フイルムスーパーカップ対ヴァンフォーレ甲府戦では、ベンチにさえ入っていない。ケガから復帰したばかりの、まさにぶっつけ本番の状態で、この開幕戦に臨んでいた。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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