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横浜F・マリノス開幕戦勝利の陰の立役者は角田涼太朗。希少な「右SBもできる左利きCB」は要注目 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishuku Torao

【マルシーニョの突破を封じた】

 松原は後半26分、交代でベンチに下がっているが、試合後のケヴィン・マスカット監督の言葉を聞けば、予定どおりの交代だったことがわかる。

 交代で入った選手はエドゥアルドだった。左利きのCB。左サイドのCBが最適なポジションになる。だが、そこには角田がスタメンで出場していた。

 甲府と戦ったスーパーカップでは今季、柏から獲得した上島拓巳が横浜FMの右SBを務めた。しかし、柏は3バックを布くチームで、上島はそこでウイングバックではなくCBとしてプレーしていた。実際、甲府戦ではサイドアタッカー色が薄そうなプレーをした。

 昨季、横浜FMの右SBとして、松原と同じくらいの時間、出場した小池龍太も、ケガのためにこの試合ではベンチ外となっていた。

 横浜FMの右SBは、戦前から苦しい状態にあった。マルシーニョ対右SBの関係で苦戦すること、松原が最後までもたないことは想定内だった。

 マスカット監督は、松原が苦しいと見るやエドゥアルドを投入した。そして右SBには角田がコンバートされた。

 だがこれは、ハイそうですかと簡単に納得できる話ではない。左利きの選手が右SBを務めるケースは稀。世界的に見てもサンプル数は少ない。以前、川崎の左利きCB車屋紳太郎が、右SBを務めた試合を見たことがあるが、それは貴重な観戦経験だったのだ。

 聞けば、角田にも右SBでプレーした経験があるとのことだが、少なくともその姿をこの目で確認したことがない筆者には、マスカット監督の戦術的交代が肝の据わった大胆不敵な采配に見えた。

 右利きと左利きの数は世界的におおよそ9対1の割合だという。左利きは少数派になるので、バランスを補おうと右利きの選手は左足を練習する。ボールの持ち方も同様に工夫する。一方、左利きは自分以外の大半が右利きなので、その必要性があまりない。つまり、それが左利きの右サイドバックが世界的に稀な理由なのだ。

 マルシーニョがフル出場したので、角田は右SBとして彼と対峙しながら実質およそ25分プレーした。そして、左利きの右SBとして問題を露呈させることなく、マスカット監督の無茶ぶり然とした采配に見事に応えた。

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