横浜FCのGKブローダーセンが語るドイツサッカー。オリバー・カーンへの憧れと故郷の特別なクラブ、ザンクトパウリのこと (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

【ザンクトパウリの人々は熱いけど、温かいんだ】

 ハンブルクは間違いなく、フットボールファンも楽しめる街だ。そこには彼が語るとおり、とびきり熱いオリジナリティに溢れるクラブがある──そう、ブローダーセンがアカデミーから過ごしたザンクトパウリだ。

 そのクラブを支える人々は温かいハートと左翼的な思想を持ち、あらゆる差別を嫌い、マジョリティーへの迎合を拒み、マイノリティーを助け、自らのアイデンティティーを大切にする。

 過去15年、ブンデスリーガ1部で戦ったのは一度だけだが、欧州中にその名を知られるクラブだ。そこで長くプレーしてきたブローダーセンに、ザンクトパウリという特別なクラブについて教えてほしいと訊くと、彼はニコニコしながら語り出した。

「まずはザンクトパウリという地域が、ハンブルクのなかでも際立った場所なんだ。左翼的で、アートも盛んだから、ミューラル(壁画)やグラフィティもたくさんある。パーティーストリートがあって、夜の街もある。クレイジーとも言われるけど、それは多くの場合、いい意味だね。とてもラブリーな場所だよ。人間が本来的に持っている感情や違いをすっかり受け入れる街さ。

 僕は思うんだけど、世界の問題の多くは、そうした違いを受け入れないことによって生まれている。ザンクトパウリの人々は熱いけど、温かいんだ。たとえば、クラブのサポーターも含め、多くの人々が難民の世話をしている。

 ホームスタジアムの付近にも、恵まれない人々のために風雨を凌げる場所を作って、彼らに家が見つかるまでの間、そこで暮らせるように助けているんだ。しかも見返りは一切、求めない。ザンクトパウリの人々は、世界を少しでもよくしたいと思って、そうしているんだよ」

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