ジュビロ磐田に入った「背水」のスイッチ。残留争いをメンタルで制するのはどこだ

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 2022年のJ1リーグも、残り2試合になった。残留争いはし烈さを増している。13位の湘南ベルマーレが35ポイント(P)、14位の京都サンガが34P、15位のアビスパ福岡が34P、16位の清水エスパルスが33P、17位のガンバ大阪が33P、そして最下位のジュビロ磐田が29P。2チームが自動降格、1チームがプレーオフに回るが、どう転んでもおかしくない。

 白熱する戦いでカギとなるのは――。

 10月22日、清水。残留をかけた一戦は往往にしてそうだが、静岡ダービーもメンタルゲームの色合いが濃かった。

「ダービーの雰囲気に飲まれた」「慎重に入っちゃった」「ボールをもっと持てたし、回せたと思う」......清水の本拠地で、磐田の選手たちは、「入り方がまずかった」と口々に反省の弁を語っている。

 最下位チームの宿命か。磐田は前向きに入ったつもりでも、やや腰がひけていた。「先に失点したくない」。その恐れが体を硬直させ、プレーを萎縮させていた。中盤でボールを握る力が弱く、受けて立ってしまい、いたずらに優勢を与えてしまった。

試合終了後、消耗した様子の清水エスパルス、ジュビロ磐田の選手たち試合終了後、消耗した様子の清水エスパルス、ジュビロ磐田の選手たちこの記事に関連する写真を見る 清水は自然と押し込む形になり、右サイドから決定機を作り出した。人数は揃っていても後手に回る磐田に対し、中央で得点王争いのトップを走るチアゴ・サンタナが脅威を与える。前半32分に得た右CKを、ニアでフリックし、ファーで飛び込んで触り、最後はチアゴ・サンタナが押し込んだ。

 磐田はセットプレーの守りに問題を抱えていた。ゾーンが基本も、それぞれの持ち場が狭く、緩慢、不規則で、常に相手にアドバンテージを取られている。エリア内で3回続けて相手に先に触られたら、それは失点につながる。

 リードを許した磐田だが、それ以降は攻める側に立つ。30対70だったポゼッション率は逆転。ただ、反転攻勢に出たのではない。
 
 清水が勝手に守る側に立ったのだ。彼らもシーズン途中で監督を交代させ、戦力補強で持ち直したが、負け癖のほうが強い。潜在的に勝ちを意識したのか、受け身になった。守ってリズムを作っていたわけではない。それでも、偶発的カウンターが決まっていたら、一気に流れを掴むことができたはずだが......。

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