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ジュビロ磐田に入った「背水」のスイッチ。残留争いをメンタルで制するのはどこだ (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

遠藤保仁の投入で流れが変わった

「後半、2点目をとれずに試合を難しくしました。2点目をとれたら、マイボールの時間を増やし、しっかりプレーできていたはずです。今年は1点リードで追いつかれたり、逆転されたりが多いので......」(清水・松岡大起)

 清水は、1点リードで十分に心理的優位に立てたはずだ。それができないのは、負けが先行している弱みだろう。2点目をとるためにこそ、マイボールを大事にし、自分たちがリズムを作ることが大切なのだ。

 試合の流れにたゆたうだけだった磐田だが、後半途中に自ら流れをつかむ。

 後半22分に途中出場した遠藤保仁が、すぐにメッセージ性のあるパスを右サイド中心に打ち込んでいる。呆気ないほど簡単に、相手のラインを突破する動きを生み出した。中盤でボールを持てる「安心」があるために、チーム全体に活力を伝播。必然的に相手への圧力になった。

 では、なぜ遠藤をベンチに置いたのか。それも負けたくないというメンタルとつながるかもしれない。前節の横浜F・マリノス戦の勝利は、実力差を考えても専守防衛からカウンターで勝負どころを作る戦略が理にかなっていたからなのだが......。

 磐田はカウンターを浴びながらも、もはや攻めるしかなく、総攻撃の形を呈した。布陣も変更し、攻撃のカードをきった。これで熱気が入り、杉本健勇は相手選手と一触即発のムードを醸し出した。

「健勇は前半からエスパルスに厳しくされていたので、熱くなったところ、エキサイトしたところはありました。冷静さは大切ですが、あれくらいアドレナリンが出たほうが1点につながることもある」(磐田・渋谷洋樹監督)

 決して褒められた行為ではなかったが、理屈を超えた感情、つまりメンタルのところで"背水"のスイッチが入った。

 後半アディショナルタイム、スローインを受けた松原后は相手を背負い、瞬間的に4人に囲まれるが、半ば強引にゴールへ向かい、もつれて倒れた。その刹那、両チームのほとんどの選手が、抗議かプレー停止で緊張を解いていたが、交代出場の古川陽介は素早い反応でラインを割りそうなボールを拾い、エリア内でフリーの同じく途中出場のジャーメイン良につなげる。ジャーメインはボールがこぼれた瞬間、パスを要求していたひとりで、やや雑だったパスを右足でコントロールし、左足ボレーをゴールに叩き込んだ。

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