ダイヤの原石はどうやって見つけるのか。フロンターレのアカデミー専任スカウトが「スピードや高さ」より重要視すること (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by AFLO

 では、今は何を重要視しているのか。

「もちろん、まずはその選手に他よりも目立つところ、秀でたところがあるかどうかはポイントです。一方で、フロンターレの代名詞である技術についてですが、ここは年齢が下がれば下がるほど、あまり意識していません。うちにはいい料理人=すばらしい指導者たちがいるので、いわゆるフロンターレらしさは、練習することで身についていくと考えています。加えて、スピードや高さといった特徴の前に、その子がサッカーを本当に好きかどうかを見るようにしています」

 重視しているのは、サッカーをやらされているのか、それとも自ら率先してやっているのかどうかだ。

「最近はいわゆる、保護者にサッカーをやらされていると感じてしまう子どもも多く見受けられます。というのも、小学生の試合を視察に行くと、ゴールが決まってもあまり喜ばない選手もいるからです。

 プロの選手ですらゴールを決めたら、ビックリするくらい喜びを爆発させるのに、まだ無邪気なはずの子どもがゴールを決めても喜ばずに、淡々と自陣に戻っていく。チームメイトもすぐに戻ってプレーを再開させている光景を見ると、誰が何のためにサッカーをしているのかという原点に気づかされました。

 そのため、その選手がゴールを決めてめちゃくちゃに喜んでいる姿や、苦しいときにチームメイトに対してポジティブな声をかけているかなど、選手がどのようにサッカーに向き合っているかを見るようになりました。その時点では、身体的な特徴としてスピードや高さがなかったとしても、サッカーが好きなのであれば、選手として伸びるという可能性は大いにあるな、と」

 教育や経験の観点から、昨今は子どもに早いうちから多くの習い事をさせるケースも増えている。団体競技であるサッカーは協調性を育まれるため、そのうちのひとつとして選ばれることもある。また、保護者自身はサッカーが好きだが、子どもは......という状況も、往々にしてある。それだけに大田和の視点は核心をついていた。

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