ダイヤの原石はどうやって見つけるのか。フロンターレのアカデミー専任スカウトが「スピードや高さ」より重要視すること (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by AFLO

 というのも、大関の成長はフロンターレアカデミーが取り組んできた施策の成果でもあった。彼はユース年代になるタイミングでFC多摩ジュニアユースから川崎フロンターレU−18に加入した。川崎フロンターレはユース年代ではセレクションを行なわない年もあり、大関はクラブが動き、スカウトしてきた選手になる。

 すなわち、大関のトップチーム昇格は、2018年からアカデミー専任のスカウトを登用したことによる、ひとつの形だったのである。

 そのアカデミースカウトとして活動する大田和直哉に、選手を見る視点について聞いた。

「アカデミーを統括する育成部長の山岸繁からは、いい料理人がいい素材を用いなければ最高の料理はできない、という話をされました。選手の育成に当てはめると、プロになる選手を育てるためには、いい指導者に加えて、能力のある選手がいなければならない。

 うちにはすばらしい料理人=指導者がいるので、そのためにはいい素材=能力のある選手を探してきてほしいと言われました。そこはアカデミー専任のスカウトとして活動するにあたって、自分自身も共感したところでした。また当初は、走るスピードが速かったり、身長が高かったりと、今までのアカデミーにはいなかったようなタイプの選手を見つけてきてほしい、というオーダーがありました」

「当初」とつけ加えたところに意味がある。

 大田和が活動をはじめた2018年時点で、アカデミー専任のスカウトを設置しているJリーグのクラブは、すでに珍しくなかった。川崎フロンターレはいわば後発だったわけだが、それから5年間で、さらに環境は様変わりした。今では複数名のアカデミースカウトを登用しているクラブもあるという。

 同時に5年間で、大田和の選手を見る視点にも変化が生じている。

「ジュニア世代の環境に目を向けると、特徴のある、もしくは特徴の異なるスクールが各地域で展開されていて、なかには週7日でサッカーをやっている選手もいます。そうした環境でサッカーをしている子どもならば、やはり人よりもプレーは抜きん出ています。そのため、一般的にサッカーがうまいと言われる選手は、ジュニアに限っていえば、作り出せる、育てられると感じるようになりました」

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