森島寛晃が責任を痛感した監督の寝言とは。終了間際の失点で優勝を逃した「長居の悲劇」の衝撃 (3ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun
  • photo by Getty Images

 このシーズン、試合中盤から後半に交代することが増え、その流れを踏むものだったが、この時だけは名残り惜しそうにピッチから去る姿が印象的だった。

「いけるところまでいって交代するのがこの試合だけじゃなく、シーズン通しての自分の起用法だったんで。ただ、この時は疲れもなくて、なんとか最後までピッチにいたかったですし、もう交代してしまうのかっていう思いはありました」

 この前の2試合は、森島が交代したあと、同点に追いつかれ、勝ちきることができなかった。この試合に限っては、自分が最後までピッチに立つことで嫌な流れを森島は断ち切りたかったのだろう。それは、この日のサポーターも同じ気持ちだったように思える。いつもなら拍手で送られるが、この日はなぜ交代なのか、優勝の瞬間までモリシにピッチにいてほしい、そんな声にならない空気が充満していた。

 ベンチに戻った森島は、ベンチコートを着て、選手の動きを追った。ピッチ上では依然、緊迫した状況が続いた。

「なんとか、勝ってほしい」

 森島は、試合を見ながら知らないうちに全身に力が入っているのを感じた。

 この時点で、セレッソはリードしており、このまま試合が終われば優勝だった。ピッチで戦う選手はもちろん、森島の耳にも他会場の結果は入ってこなかった。

 アディショナルタイム寸前の89分、 FC東京は右からのコーナーキックを得た。

「終了間際のコーナーキックは、サッカーあるあるじゃないですけど、ほんまに一番危ないじゃないですか。だから、蹴る前からめちゃくちゃイヤな感じがありました。逆にFC東京の立場でいうと、この時間でのセットプレーは、すごいチャンス。もうイヤやなぁ。みんな、なんとかしのいでくれよって思っていました」

 森島は、祈るような気持ちでベンチに座ってプレーを見守っていた。デザインされたコーナーキックからドフリーで放たれたシュートはディフェンダーが一度は体でブロック。そのボールはセレッソの選手の前ではなく、今野泰幸(FC東京)の前にこぼれた。今野はそれを胸トラップして足元に落とし、左足で振り抜いた。

 そのままボールがゴールネットに突き刺さり、森島はベンチで頭を抱えた。

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