西川周作が正GKの座を失った昨季の葛藤。「自分の特長やよさをうまく出せていなかったのではないか」 (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by AFLO

誰にも言えぬ葛藤との日々

 練習で先発から外れることを告げられた日には、家に帰り妻にもその旨を伝えた。驚いた表情は見せたものの、明るく勤めようとする姿に、「練習がんばるよ」と西川自身も笑顔を見せたという。

 ただ、時間が経てば、このまま試合に出られなくなる自分の姿を想像してしまうこともあった。誰にも言えぬ心の葛藤を妻にさらけ出したこともあった。

「今思えば、それが不安だったのかもしれないですね。妻にだけはいろいろと相談しました。でも、その時も前向きな言葉をかけてくれて、本当に心強かったことを覚えています」

 自分を見つめ直すなかで見えてきたことがあった。

「チームとして新しいサッカーにチャレンジしていたこともあり、そこを自分自身も考えすぎてしまって、自分の特長やよさをうまく出せていなかったのではないかと、今、改めて振り返ってみると思います。あとは、いろいろなことを経験してきたからこそ、昨季のことは今までよりも悔しさがあって、それをまた力に変えることができたと思っています」

 イチからGKとして学び直している今シーズンも、プレーするうえで大切にしている「無心」を取り戻したのもこの時期だった。西川も「無心でプレーしている時こそ、無双モードになれる」と今季のプレーについて話してくれていた。

 再びチャンスが訪れたのは、7試合後だった。不測の事態により巡ってきた出場機会だったが、西川はJ1第19節の柏レイソル戦に先発すると、2−0の勝利に貢献した。無失点で相手の攻撃をシャットアウトしたプレーには、それこそ彼の意地を見た。

「意地でしたね、それは間違いない(笑)。自分が結果を残すならここだな、ここしかないなって思っていました。その結果、先発に復帰することもでき、昨年は最後に天皇杯を獲って終えることができました。目に見える結果を残してシーズンを終えられたことも、今シーズンにつながっていると思います」

 あの悔しさや時間、そして再び正GKの座に返り咲いた自信が原動力であり、財産になっている。

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