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宮市亮はやっぱりモノが違う。ベンゲルを魅了した大物感あふれるプレーを見逃すな (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • アフロ●写真 photo by YUTAKA/AFLO SPORTS

新人選手のようだった29歳

 筆者はその時、これまで現場で宮市のプレーをじっくり見た記憶がなかったことに気づかされた。「これがあの宮市か」と、伝説の選手に遭遇したような感激を味わうことになった。観衆も同様だったのではないか。宮市にボールが渡ると、スタンドには何とも言えぬどよめきが広がった。

 理由はパッと見、断然、速かったからだ。ボールを受けて踏み出す一歩目の推進力にまず目を奪われた。モノが違う。搭載しているエンジンが違う。高級車を見るような踏み出しだった。

 とはいえ、光っていたのは単品としての魅力で、周囲との絡みでは円滑さに欠けた。淡泊さも露わになった。試合慣れしていない新人選手にそっくりだった。潜在能力の高さがうかがえる初心で荒削りな29歳。キャラクターと年齢にギャップを抱える宮市について、筆者は当初、懐疑的な目を向けたのも事実だった。

 ところが、ケヴィン・マスカット監督の評価は違った。こちらより高かった。宮市を我慢強く使った。それに呼応するように、宮市のプレーも熟れていった。

 マスカット采配は、とにかく多くの選手に出場機会を与えようとする。アジアチャンピオンズリーグ(ACL)に出場していることもあるが、出場時間をできるだけ多くの選手でシェアしようとする。4月にベトナムで集中開催されたそのACLグループリーグ(H組)では、6試合で実に24選手を起用している。J1リーグ18チーム中、スタメンとサブの間の境界線が最も鮮明ではないチームという特徴が、このACLでも浮き彫りとなった。

その結果、宮市のACLにおける出場時間は24選手中9番目に上昇。自らが備える潜在能力を、試合を重ねるごとに発揮させていった。右ウイングから左ウイングにポジションを移すと、より好プレーを見せた。

 Jリーグ初ゴールは、5月18日に行なわれた浦和レッズとのアウェー戦の前半30分に生まれた。くさびに入った1トップ、アンデルソン・ロペスから左45度でボールを受けると、クロスボールを送ると見せかけて、ファーポスト内側に巻くようなシュートを蹴り込んだ。

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