中村憲剛と佐藤寿人がリーダーに必要なものを力説。「自分に甘いキャプテンの話なんて、誰も耳を傾けない」 (5ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki 佐々木麻里子●ヘア&メイク Hair & Make up by Sasaki Mariko

中村 それも自分のなかでは、ちょっと考えられないこと。俺はまだお客さんがそんなに入っていない時代から知っているので、時間とお金を使ってスタジアムに来てくれることに感謝の気持ちしかなかった。根底にその想いがあるので、そこは手を抜くことは最後の最後までなかったと言いきれます。

佐藤 1万人、2万人入ることがどれだけありがたいことなのか。そういう想いが足りなかったかなと。

中村 その流れで言うと、キャプテンって一番先頭を歩くじゃない。だから一番前に立つ人間として、ピッチ外のところも自分がしっかりとした姿を見せないといけないと感じていた。寿人も名古屋で試合後に歌っていたよね。

佐藤 広島の時はほかの選手が積極的だったのでやっていなかったんですけど、名古屋に行ってから殻を破りました(笑)。恥ずかしいとか言ってられなかったですよ。途中でベンチに退いて、ジャージ姿で場内を周ることもありましたし、出番がないなかでもキャプテンとして周ることもありました。

 チームを変えるために、いい意味で馬鹿になろうと。人をどれだけ巻き込んで、変えていけるか。それまではそういうことをしていなかったので、名古屋での僕の姿を見た広島の人たちはびっくりしていたと思いますよ。

中村 フロンターレは試合後にサポーターと勝利の喜びを分かち合うことをJ2時代からやっていて。J1に上がってお客さんが増えても、ピッチ外のところを大事にしてきました。そもそも、僕自身が楽しかったですから。

 そういう意味では、意識はしていないけど、リーダーの素養みたいなものが育まれていったのかもしれません。自分のなかで特別なことは何にもしていないけど、スタジアムに来てくれた人と一緒に戦うことは、チームが勝つために、優勝するために必要なことだと思っていましたから。

佐藤 それでも、たぶん「俺はいいわ」と言う人もいるじゃないですか。そこで、クラブがよくなるために必要だと思えるかどうか。もちろんピッチ上のパフォーマンスが一番大事ですけど、プレー以外の部分の重要性もプロである以上は理解する必要があると思います。

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