現在ネルシーニョただひとり。日本サッカーを支えてきた「ブラジル人監督」がJリーグで激減 (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

時代の流れには逆らえず...

 一方、現役時代は世界的名選手として知られたサッカー王国ブラジルのレジェンドたちの存在も忘れられない。

 1992年から1994年の途中まで、Jリーグ初年度唯一のブラジル人監督として清水エスパルスを率いたエメルソン・レオン、1994年に約半年間だけ清水で指揮を執ったリベリーノ、プロ化以前は日産自動車(横浜F・マリノスの前身)の監督を務めたこともある京都パープルサンガ(1995〜1996年/現・京都サンガF.C.)のオスカー、2000年から5シーズンにわたって鹿島を率いたトニーニョ・セレーゾ、そして2012年に鹿島の監督を務めたOBでもあるジョルジーニョらだ。

 このなかでは、2期(2000〜2005年、2013〜2015年)で2度のリーグ優勝を含む5つの国内タイトルなどを獲得したトニーニョ・セレーゾの成績が突出している。世界的著名人でもある彼らレジェンドがJリーグのチームを率いたことは、リーグ自体の知名度アップに大きく貢献したことは間違いない。

 そのほか、2002年W杯でブラジルを優勝に導き、ブラジルサッカー史においても屈指の名将として知られるルイス・フェリペ・スコラーリも、短期間ながら1997年にジュビロ磐田を率いたこともあった。ブラジル人監督としては珍しく、その後はポルトガル代表やイングランドの名門チェルシーを率いた名監督がJリーグで指揮した事実も見落とせない。

 ネルシーニョを除くと、2020年以降にJリーグで監督を務めたブラジル人は、2020年から2021年4月にかけて鹿島を率いたザーゴ、2021年に4度目のセレッソ大阪監督を務めたレヴィー・クルピ(同年8月まで)のふたり。いずれもシーズン途中の退団となり、時代の流れには逆らえずに終わっている。

 つまり、現在柏で指揮を執るネルシーニョはJリーグでブラジル人監督のバトンをつなぐ、現時点における最終走者。下馬評を覆し、スタートダッシュに成功したネルシーニョの名将ぶりは、その意味でも注目に値する。

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