現在ネルシーニョただひとり。日本サッカーを支えてきた「ブラジル人監督」がJリーグで激減

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

 1993年、空前のブームとともに産声を上げたJリーグは、これまで紆余曲折がありながらも今年で30周年を迎えた。

 その間、10チームで始まったJリーグは着々とチーム数を増やし、現在では3カテゴリー計58チームにまで拡大。開幕当時をよく知るオールドファンにしてみれば、隔世の感があるはずだ。

 そんな30年の歩みを振り返る時、絶対に無視できないのが、いつの時代もJリーグの成長と発展を支えてくれた「ブラジル人」の存在だろう。

4つのチームでJリーグの監督を務めてきたネルシーニョ4つのチームでJリーグの監督を務めてきたネルシーニョこの記事に関連する写真を見る それ以前から日本では数多くのブラジル人がサッカーの伝道師的役割を果たしてきたが、Jリーグの時代で言えば、ジーコこそがその象徴的存在。鹿島アントラーズのみならず、日本サッカー界全体に大きな影響を与えたジーコの存在なくして、現在のJリーグはなかったと言っても過言ではない。

 そのジーコの影響もあり、これまで数えきれないほどのブラジル人選手が来日し、Jリーグの舞台で活躍。その流れはこの30年の間もまったく途絶えることがなく、今シーズンも3カテゴリーで90人以上のブラジル人選手がプレーする。日本以外の国籍別では、今シーズンもダントツの最多を誇る。

 その一方で、近年急激に減少してしまったのが「ブラジル人監督」の存在だ。

 今シーズンのJリーグ全58クラブのなかで、ブラジル出身監督は柏レイソルで指揮を執るネルシーニョただひとり。3年前の2019年5月、オズワルド・オリヴェイラが浦和レッズを退団した際、史上初めてJ1でブラジル人監督の系譜が途切れたこともあったが、そのシーズンの唯一のブラジル人監督も、その年J2の柏を率いていたネルシーニョだけだった。

 近年におけるJリーグの外国人監督のトレンドは、明らかにヨーロッパ出身者に傾いている。ブラジル以外のサッカー先進国で活躍するブラジル人監督が皆無に等しい現在、しかも日本人指導者の数も増えたJリーグで、同じ現象が起こるのは当然だろう。

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