ジュビロ磐田が「ショッキングなゲーム」と大敗。それでも感じたプラスの新たなエッセンス

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

 昨季J2を制し、3季ぶりのJ1復帰を果たしたジュビロ磐田。今季はJ1の舞台に戻るにあたり、新たな指揮官をチームに迎え入れた。

 それが、昨季までヴァンフォーレ甲府を率いた伊藤彰監督である。

 昨季の甲府はJ2で3位と、惜しくもJ1昇格を逃した。だが、自動昇格となる2位との勝ち点差はわずかに4。伊藤監督は最後まで昇格を争ったチーム作りが評価され、"個人昇格"を果たしたというわけだ。

 過去の歴史を振り返っても、J1に昇格したクラブが新監督を迎えるケースは、それほど珍しいものではない。

 しかし、前のシーズンにJ1昇格を争ったライバルから指揮官を"引き抜く"となると、かなり異例の人事である。言い換えれば、磐田は甲府としのぎを削るなかで、伊藤監督の手腕にそれだけの魅力を感じていたということだろう。

 実際、両者の相性がよさそうなことは、昨季の戦いからもうかがえる。

 主戦システムは、ともに3-4-2-1。主導権を握って攻守を繰り返そうという狙いも通じている。

 あえて違いを挙げるなら、磐田がより「感覚的」だったのに対し、伊藤監督が率いた甲府はより「論理的」。前者のサッカーには、選手同士がコミュニケーションをとり、狙いを共有することで成り立っていた印象があるが、それに対して後者は、誰がどこに立てば相手の守備のバランスが崩れるのか。そんな理屈のうえに、目指すサッカーが構築されていた。

 磐田にしてみれば、これまで志向してきたスタイルを大きく変えることなく、ピッチ上で展開されるサッカーの精度や再現性を高めるという意味で、伊藤監督はうってつけの存在だったのではないだろうか。

 今季ここまでの戦いぶりを見ても、新監督の就任効果は早くも見え始めている。

 システムを数字で表せば、昨季から変わらぬ3-4-2-1でも、それはあくまで基本形にすぎない。4-3-3や4-4-2など自在にその姿を変化させ、立ち位置で優位性を作ってしまうサッカーは、いかにも伊藤監督のチームらしい。

 象徴的なのが、"DF"鈴木雄斗だ。

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