森脇良太「俺、もう無理っす」から愛媛FCに15年ぶりの復帰。「もとはネガティブ」な男はなぜムードメーカーになったのか (4ページ目)

  • 寺下友徳●取材・文 text by Terashita Tomonori
  • photo by ©EHIMEFC, Terashita Tomonori

愛媛での「J2復帰、J3優勝」へ

 1年でのJ2復帰を期す愛媛FCにとっても、森脇にとっても勝負の2022年。ただ、彼自身はここでもポジティブな思考を欠かさない。

「今季、愛媛FCがJ3優勝、J2昇格することでみんなの価値が上がっていくんです。プレーヤーとしていいプレーすることでももちろん価値は上がりますが、それ以上の価値はチームが成功することで得られる。この愛媛の地が僕は大好きだし、広島や京都、特に浦和で感じた『みんなが浦和レッズ』のようにスポーツが街を明るくする、サポーターが楽しくできることをやっていきたいです」

 15年ぶりに身にまとうオレンジユニフォームで熱く意気込みを語った森脇は、今季クラブが掲げる大きな目標への強い思いをこう表現した。

「日本代表でアジアカップを獲った時も、広島でJ2優勝、J1優勝をした時も、浦和でACLを勝った時もみんなうれしかったんですが、愛媛でJ3優勝をすることができればカテゴリーの差はあれ、僕はそれらと同じくらいうれしいと思うんですよ。今度はこのクラブで優勝へ突き進みたいですし、歓喜の瞬間を数多くつくっていきたいです」

 3月13日、2800人を超える観衆が詰めかけたホームのニンジニアスタジアムでの開幕戦・カターレ富山戦。右サイドバックで先発した森脇は、「うしろから前線の選手をサポートして、自分が使われなくてもパスコースを作っていく犠牲心を持ってやっていく」と、的確なポジショニングとコーチングでチームを鼓舞。51分にMF佐々木匠が先制ゴールを決めると、この日、コラボイベントで熱戦を展開した「愛媛プロレス」もびっくりのプロレス3カウントゴールパフォーマンスを主導した。

「ピッチ上で示すのが一番だし、試合に勝てなかった恥ずかしさはあるし批判を浴びるのも間違いないが、そのなかでも愛媛FCがもう1回立ち上がっていくなかで、ピッチ外での楽しさもあるメッセージを伝えたかった」

 試合は、逆転負け。「自分たちのスタイルも出せなかった」。2020年の京都サンガ時代以来、約1年3カ月ぶり先発フルタイム出場の充実感以上に悔しさをにじませた森脇。それでも、力強く前を向いた。

「みんな悔しさを持って今を過ごしているとは思うが、試合はどんどんくる。過去ばかり振り返っても状況は好転しないと思うので、新しい風を吹かせて次のFC岐阜戦に向かっていきたい。『前向きに、切り替えていこう』と率先して声をかけていきたいですね」

 サンフレッチェ広島からの期限付き移籍から15年が経ち、「元日本代表DF」に肩書きが変わった森脇良太。J2復帰、J3優勝とともに「オンリーワン」の地方クラブを目指す愛媛FCと、背番号46を背負う35歳の挑戦は続いていく。

【プロフィール】 
森脇良太 もりわき・りょうた 
1986年、広島県生まれ。元日本代表。2005年にプロ契約を結んでサンフレッチェ広島に入団。期限付き移籍により2006、2007年は愛媛FCでプレー。広島に復帰後、2012年まで同クラブに在籍。その後、浦和レッズ、京都サンガF.Cを経て2022年に15年ぶりに愛媛FCに復帰した。

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