日本は今や「ウイング王国」。FC東京の決勝点を生んだ身長160cmの韋駄天など注目株が 続々

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishuku Torao

 試合後、サンフレッチェ広島のミヒャエル・スキッベ新監督は「敗戦の原因がどこにあるかわからない試合もある」と述べた。「いいプレーをしていたが結果がついてこなかった」とも。3月12日に行なわれたFC東京対広島。「どちらが勝ってもおかしくない試合」とはよく用いられる表現だが、この一戦はその言葉がピタリとはまる接戦だった。

 2点先取したFC東京が、広島の反撃を1点に抑える結果となるが、もし広島が勝利していれば、最も目立った選手として挙げるべきは、3-4-2-1の右ウイングバック(WB)藤井智也だった。右利きのウインガー。ドリブルで仕掛ける際に、タッチラインに半分背を向け、身体を斜め半身にしながら、遅れ気味に出る左足でボールを押し出すように前進する。突破の瞬間、それを大きく前方に持ち出すわけだが、その動作にディフェンダーは幻惑される。わかっていてもついていくことができない。半歩、遅れる。

 左利きはともかく、右利きでこのプレーを普通にこなす選手は多くない。縦突破を得意にする右ウイングが少ない理由、そして立命館大卒3年目の藤井が貴重な存在に見える理由に他ならない。縦方向への切れ味が鋭い、瞬間、実際の走力以上に速く見える選手。前半、FC東京ゴールの右ポストをかすめる強シュートを放っているが、それが決まっていれば、試合の結果は違っていたと思われる。

 広島は左WBを務めた流経大卒の新人、満田誠も可能性を感じさせるプレーをした。スキッベ監督が自信を覗かせるように「敗戦の原因がどこにあるかわからない」と述べた理由は、この左右のWBが高い位置でウイング然と構えたことと深い関係がある。同時に、森島司、浅野雄也の2シャドーが、1トップ(ジュニオール・サントス)のシャドーと言うより、両WBと近い距離で構えたことも大きいと見る。結果的にFC東京の両SBにしっかりプレスがかかっていた。FC東京の4-3-3と対峙しても、広島の3バックが守備的サッカーに陥りにくかったことも、競った試合になった理由だ。

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