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森脇良太「俺、もう無理っす」から愛媛FCに15年ぶりの復帰。「もとはネガティブ」な男はなぜムードメーカーになったのか (3ページ目)

  • 寺下友徳●取材・文 text by Terashita Tomonori
  • photo by ©EHIMEFC, Terashita Tomonori

チームに前向きな影響を与える存在

 ポジティブなオオカミにエサをやり続けた結果、いつしか森脇には「ムードメーカー」の称号が与えられるようにあった。象徴的なのが、2011年にカタールで開催された「AFCアジアカップ」であろう。森脇は初の日本代表に選出されるも、フィールドプレーヤーでは唯一出場なし。だが、大会通じてチームメイトを盛り上げ続け、優勝を果たした表彰式では中央に立った。彼に与えられた評価は「影のMVP」であった。

「自分としては試合に出られない実力のなさに口惜しさは感じていました。でも、これは浦和でも京都でも、そして愛媛でも変わらないんですが、一番大事なのはチームの勝利。当時の日本代表で言えば、アジアチャンピオンになること。そこだけは見失ってはいけないと思っていましたし、日本代表が優勝することで自分の価値も上がる。

 口惜しさがあってもどう振る舞うかが大切だと思っていました。だから特別なことをやったとは思っていませんけど、試合翌日に試合に出ていないメンバーで行なうトレーニングではよりポジティブなエネルギーを与えられるようにしていましたね。それくらいですよ。僕が何も考えてないからできるかもしれないですけど(笑)」

 ただ、その心境に立ち入れる人間はJリーガーのなかでもじつはそう多くない。多くの一流選手から学びを得た浦和レッズでの7年間、京都サンガでの2年間を経て今年、ここまでの愛媛FCにおける彼の言動を見ていてもそうだ。

「いつオファーがきてもすぐサッカーができるコンディションを整えていこう」と、間断なく積み上げてきたフィジカルに立脚したハードワークと、「みんなとコミュニケーションを取りたい」と、練習初日から誰よりも声を出して、チーム全体にプロフェッショナルな姿勢を体現。JFL・FCティアモ枚方から新加入したMF佐藤諒とともに就任した新役職「ポジティブ・エナジャイザー」にふさわしい存在感を示し続けている。

 始動当初は「うるさい人」が第一印象だった周囲も森脇の真意を理解し始めた。2006年の現役ラストイヤーを愛媛でともにプレーした石丸清隆監督が「常に前向きに取り組む姿勢はありがたい。かなり大きな存在」と評価すれば、「チームメイトになる前にもっとオラオラな人かと思っていましたけど(笑)、実際にはすごく親切だし人としても素敵な人」と話すのはJ2・ジェフ千葉から新加入したボランチの矢田旭だ。

 そして、森脇のキャプテンシーを評価するのが、2歳年上でキャプテンを務めるGK徳重健太だ。

「(森脇)良太くんはプレー面も含めて、いろいろな引き出しを持っているし、いい雰囲気をチームへ自然に与えてくれる。僕はすごく助かっています。今まであった選手のなかで誰と比較できるキャプテンシーか? ヴィッセル神戸の時に一緒にプレーしたポトルスキ(元ドイツ代表MF)くらいしかいないです」

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