中村俊輔が語る、指導者としての理想像。「落合博満さんは本当に細かいところまで見ている。俺もそっち系だな」 (3ページ目)
【そもそも指導者って何だ?】
「中学生や高校生、小学生にも教えたい。プロは勝つサッカーをどうやってやるかだし、使ってもらえれば『あの監督、よかったな』ってなるだけだから。それに言いすぎると、『あの人はそれでできただろうけど、俺らにそれを押しつけるなよ』ってなるし。高校生、中学生、小学生に押しつけるつもりはないけど、何気なく言ったことでパッと道が開けるから。でも、そもそも指導者って何だろうね?」
その語源をたどると、英語の「coach」はハンガリー語の「kocsi」=「馬車」が由来だ。だから一般的には、指導者の役割は「導くこと」や「連れていくこと」だとされる。
「B級のレベル(アマチュアレベルが指導対象)だと、『教える』ではなく『気づかせる』とか言うじゃん? でも、ある程度は教えてもいいと思う。自分で気づくまで我慢して待つと言っても、その間に気づかなかったら、その選手はどうするんだって話になるから。学校の先生や会社の偉い人がどうやっているかも興味あるね」
中村には、以前から関心を持っている指導者がいる。2004年から2011年までプロ野球の中日ドラゴンズを率い、すべての年でAクラス入り、4度のリーグ優勝と2007年には日本一を達成した落合博満だ。
「落合さんは批判されるし、なかには嫌う選手もいるかもしれないけど、"勝つ監督"なんだよね。選手だけでなく、記者に対しても『お前、毎日来ないのに、何で書けるんだよ?』とか、本当に細かいところまで見ている。俺もそっち系だな。
選手をよく見ていたら、顔つきからメンタリティ、やる気があるとかわかるじゃん? でも、それで『あいつ、声出してねえな』『やる気ねえな』とアラを探すのではなく、そこからどうしていくかだよね」
『察知力』という著書があるように、中村はふだんから周囲をよく観察している。たとえば車のハンドルを握っても、細かいところまで注意を凝らしている。おそらくそうした姿勢が、グラウンドで絶妙なパスコースを見つけ出すことにも通じるのだろう。
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