圧倒的に強い青森山田の"ラスボス"ぶりが、高校サッカー界にもたらす意外な効果 (2ページ目)
相手にとっては、まさに難攻不落の城。崩すのは簡単ではなく、少し揺さぶったぐらいではびくともしなかった。憎たらしいほど強く、ネット上ではヒール役になることも少なくない。しかし、それは圧倒的な強さの裏返しであり、"高校サッカー界のラスボス"としての宿命と言えるだろう。
こうして圧倒的な強さを誇示している青森山田だが、実は他チームにとっては彼らの存在が、チームの強化を図る上で大きな役割を果たしている。
大会前から、多くの選手が対戦したいチームに青森山田を挙げていた。もちろん、選手たちの憧れから来る部分もあるだろうが、高校最高峰のレベルを知りたいという側面がそうした意見に集約されたとも言える。
たとえば、今大会の準決勝で青森山田と対戦した一昨年度の高校サッカー選手権覇者・静岡学園は、0-4で敗れた。優勝候補の一角に挙げられていた名門校は今年も攻守に実力者を揃え、Jクラブから注目されている選手を複数抱えているタレント集団だ。
しかし、それだけの選手たちを擁しながら、準決勝では無得点で終わったどころか、放ったシュートも0本。試合前には想像できなかったスコアで敗れたが、チームを率いる川口修監督は青森山田と対戦した意味を別のところに見出している。
「本当にお金をいくら払っても、青森山田と真剣勝負の公式戦はできない。明確な目標を持たせてもらった」
実は今年3月に、静岡学園は青森山田と練習試合を行なっている。その際は4-3で打ち勝ったが、春先のゲームかつトレーニングマッチということでプレーの強度は別モノだった。だが負ければ終わりのトーナメント戦になれば、自ずとインテンシティは一段階上になる。
逆に言えば、真剣勝負の場でなければ、全国を獲るための基準を選手たちが学べないのだ。DF伊東進之輔も青森山田と対戦して、多くの学びを得た選手のひとり。実際に対峙し、考えさせられることが多かったという。
「自分たちが思っている以上に、切り替えの速さを持っていた。青森山田以外には通用してきた部分だったので、勝つためにもっとやらないといけないと感じさせられた。青森山田に勝つためにやっていけば、もう1度対戦するチャンスは必ずある。強度や巧さも含め、もっとレベルを上げていきたい」
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