圧倒的に強い青森山田の"ラスボス"ぶりが、高校サッカー界にもたらす意外な効果

  • 松尾祐希●取材・文 text by Matsuo Yuki
  • photo by kyodo News

 今の青森山田は、かつて一時代を築いた国見、帝京、市立船橋よりも強いかもしれない。

近年圧倒的な成績を誇る、青森山田高校近年圧倒的な成績を誇る、青森山田高校この記事に関連する写真を見る 新型コロナウイルスの影響で2年ぶりに開催された今夏の全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会(インターハイ)は、青森山田の優勝で幕を閉じた。

 2016年以降、青森山田は冬の全国高校サッカー選手権で2度の優勝と2回の準優勝を成し遂げ、2種(ユース)年代最高峰の高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグも2度制してきたが、この夏のインターハイでの日本一は実に16年ぶりとなる。近年は毎年のように優勝候補の一角と言われていたが、今回を除いた場合の最高成績は2014年と2016年のベスト4。

 そのなかで今大会は序盤から圧倒的な強さで勝ち上がり、全6試合で奪ったゴールは1大会の最多得点記録を更新する30点。失点も僅かに3つで、完封勝利を収めた4試合のうち3試合は、相手に1本のシュートも打たせない"パーフェクトゲーム"だった。

 今年の青森山田は攻守にタレントを揃え、高校年代では頭ひとつ抜けた実力を持つ。高校卒業後に欧州挑戦の可能性があるMF松木玖生と、Jクラブ注目のMF宇野禅斗が組むドイスボランチは攻守両面で圧倒的な存在感を発揮し、完成度が高い。

 彼らを軸に攻撃を組み立て、ドリブルで局面を打開するMF藤森颯太や得点力に秀でたFW名須川真光がゴールを狙う。守備陣も、今季は昨季のレギュラーがひとりもいない状況からスタートしたが、日を追うごとに安定感が増した。

 個々のレベルが高い上にチームとしての完成度も高く、相手に合わせていろんな戦い方を繰り出せるのも、強さを下支えしていた。相手が堅守速攻で来るのであれば、じっくりとボールを動かして相手を攻略。逆にポゼッションを得意とする相手には、敢えてパスを回させ、組織的なプレスでボールを奪ってからのショートカウンターで一気に畳み掛けた。

 また、伝統のセットプレーの強さも健在。CK、FK、ロングスローなど多彩な仕掛けを持っており、拮抗した試合でも容易くゴールを奪う術を持つ。

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