圧倒的に強い青森山田の"ラスボス"ぶりが、高校サッカー界にもたらす意外な効果 (3ページ目)

  • 松尾祐希●取材・文 text by Matsuo Yuki
  • photo by kyodo News

 本気の青森山田と夏の時点で対戦できたメリットを、指揮官もこう話す。

「青森山田とやらせてもらい、自分たちの現在地を知った。これからやらないといけないところが明確に出たので、今大会は非常によい経験ができたと思う。本当に気持ちいいぐらいの完敗。すべての面で圧倒された。青森山田はプレミアリーグで首位を走っているけど、毎週のように強度が高いゲームをやっているので全然違うと感じさせられた。

 青森山田を基準にして、今後はトレーニングをしないといけない。一番よかったのは選手たちがこの強度を体感できたこと。大会が始まる前から最低でも(青森山田と対戦できる)準決勝まで行こうと話していたので、非常によい経験を積めたと思う」

 今やプロ予備軍のJユースのクラブですら、"打倒・青森山田"を掲げており、本気で倒そうとして向かっている状況だ。それでもそんなJユースクラブが居並ぶ高円宮杯U-18サッカープレミアリーグEASTでも、青森山田は今季開幕からリーグ新記録の開幕7連勝を果たすなど、7勝1分1敗で前半戦を首位で終えた。

 高校サッカー界に留まらず、ユース年代全体のトップを走る青森山田。そんなチームと戦えば、日本のトップクラスを知る機会になる。となれば、公式戦で戦える場が限られている高体連のチームが、こぞって青森山田と対戦したいと思うのは当然だろう。

 準々決勝で対戦した東山の福重良一監督も川口監督と同じ感想を持ったひとり。公式戦で青森山田と対戦した意味を噛み締めた。

「インターハイ前の和倉ユース大会でも対戦させてもらったのですが、(公式戦は)トレーニングマッチやフェスティバルとは違う。準々決勝の試合で言うと、前回対戦した時以上にプレーのスピードがアップしていたし、選手たちも驚くほど違うと感じたはず。インターハイの初戦ではなく、選手権でもなく、準々決勝のタイミングで高校ナンバーワンと言われているチームと対戦できた経験値は大きい」

 決勝で延長戦まで戦い、1-2と惜しくも敗れた米子北も、青森山田の強さを目の当たりにした。しかも、今大会を通じて初めて青森山田からリードを奪って、追われる展開を味わった唯一のチーム。とくに序盤にリードを奪ってから60分以上、青森山田の強烈な圧力に耐え続けた経験は何事にも代え難い。

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