王者川崎で新風を巻き起こすシンデレラボーイ。その稀有な経歴とは? (5ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 ただし、誰もがステップアップできるわけではない。遠野にはHonda FC時代も、福岡時代も、もっとさかのぼればサッカーを始めた少年時代からも、持ち続けてきたものがある。

「貫いてきた姿勢があるとすれば、向上心ですかね。もっとうまくなりたい。もっと成長したい。その気持ちは本当になくしたことがないですね」

 川崎では全体練習を終えたあと、毎日のようにボールを止めて蹴る練習をしている。

「ほかにも試合前日には、対面した状況でパスをもらってターンする練習もしています。小さなゴールが3つあるのですが、素早くターンして、そこに向かって強いパスを出すんです」

 4−3−3のインサイドハーフでプレーした際、素早いターンから果敢にゴールを狙えているのは、その賜物だろう。鬼木達監督からは「大弥のいいところは、思いっきり足を振り抜けることだ」と言われたという。だから、途中出場する時も「思いっきり振ってこい」と背中を押されている。

◆中村憲剛も佐藤寿人も同意見。「海外で活躍する選手に共通すること」>>

「ゴールを取ると自信にもつながりますし、もっと、という貪欲さが出てくる。そうした小さな積み重ねのひとつひとつが、今につながっているのかなと思います」

 無駄なことはひとつもない。すべての出来事を有益にするのも、無益にしてしまうのも、自分次第である。向上心があるかぎり、遠野は成長し続ける。そして、今もまだ、その過程にある。

【profile】
遠野大弥(とおの・だいや)
1999年3月14日生まれ、静岡県出身。2017年に藤枝明誠高からJFL所属のHonda FCに入団。初年度から主力として活躍し、2020年に川崎フロンターレに完全移籍を果たす。レンタル移籍でアビスパ福岡に1年間プレーしたのち今季復帰。ポジション=FW。身長165cm、体重66kg。

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