王者川崎で新風を巻き起こすシンデレラボーイ。その稀有な経歴とは?

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

遠野大弥(川崎フロンターレ)インタビュー

 JFLのHonda FCからJ1の川崎フロンターレへ。そんな異色の経歴が目を引いた。JFLはJ1から数えて4部相当のアマチュア。そこで頭角を表わした若手が今季、錚々たるメンツが名を連ねる昨年J1王者・川崎のなかで輝きを放っている。FW遠野大弥(だいや)、22歳。いったい、どんな選手なのか?

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今季すでに4ゴールを決めている遠野大弥今季すでに4ゴールを決めている遠野大弥この記事に関連する写真を見る J1王者の川崎フロンターレに飛び込み、躍動する遠野大弥を見ていると、挑戦することの意義にあらためて気づかされる。そして挑戦するタイミングに、遅いも早いもないことを知った。

 それだけに、もし過去の自分に声をかけられるとすれば、何と伝えるかと聞いてみたくなった。すると、遠野はこう言った。

「無駄なことはひとつもないから、自分が思ったように行動すればいい、と伝えたいですね」

 そう答えられるのは、今が充実している証でもあるのだろう。

「フロンターレに今シーズン加入した当初は、一緒のチームなのに『うわっ、すげーな』って思いました。それくらい『(ボールを)止めて蹴る』の質に差があると感じたんです。でも、そこに追いつこうとやっているうちに、自分自身もうまくなっていると実感しています。

 練習では、狭いエリアでポゼッションを高めるゲームをしているのですが、それによって試合になるとピッチが広く感じられる。スペースがあるように思えれば、判断スピードにも時間があるように感じられるんです。まるで試合のほうが楽に思えるほど、余裕を持ってプレーできている感覚があります」

 試合を上回る練習の強度と質がある。アビスパ福岡への期限付き移籍を経て、今シーズン加入した遠野が身をもって体感した事象だけに、あらためて川崎の強さに触れた気がした。

 J1屈指の強さを誇るチームで競争に揉まれた遠野は、J1第2節のベガルタ仙台戦で初先発すると、いきなり初ゴールを記録。第8節のサガン鳥栖戦でも、スルーパスに抜け出すと、混戦からゴールを決めて1−0の勝利に導いた。

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