齋藤学が移籍を決意した理由。「あの1点がなかったらしていないかも」

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

『特集:Jリーグが好きだっ! 2021』

齋藤学インタビュー 後編

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今シーズンから名古屋グランパスに移籍した齋藤学今シーズンから名古屋グランパスに移籍した齋藤学 2020年11月25日、ガンバ大阪戦――。

 勝てば川崎フロンターレの優勝が決まる試合で、齋藤学はベンチスタートだった。だが、後半41分、出場してわずか4分後に5点目となるゴールを決めた。シーズン初となるゴールで、仲間に祝福され、照れくさかったがうれしさもあった。それから数日後、齋藤の中にそれまでなかった感情が芽生えてきた。

「あの1点がなかったら移籍していなかったかもしれない」

 齋藤は、そう言った。

 どういう意味なのか、最初はわからなかった。2年間、雌伏の時を経て、3年目のシーズン途中に這い上がってスタメンを取り返した。そして、12連勝と圧倒的に強い川崎を支えるひとりになり、優勝に貢献。これからも齋藤は、川崎になくてはならない選手になるはずだった。

「あの1点で移籍しようと決めたわけじゃないけれど、点を取れていなかったら移籍は考えなかったと思います。だって、1点も取れないのは悔しいじゃないですか。でも、1点取ったことで、次にチャレンジしたいなって思ったんです。

 もちろん、フロンターレに残ることも薫(三笘)やアキ(家長昭博)さん、竜也(長谷川)とポジション争いをしないといけないのでチャレンジになる。それでも、やっぱり3年いると居心地がいいんです。年齢的に上になって、誰かに何かを言われることはないし、試合に出たら、みんながどう動いて、どういう感じでやるのか、だいたいわかる。だから契約延長の話をもらった時は、すごくうれしかったんです。

 ただ、それまで何百分と試合に出ているのに点が取れなくて、ガンバ戦はわずか4分間で点が取れてしまった。優勝を決める試合で点を決め、それまでの経緯もあり、『そろそろ(川崎を)出る時かなぁ』と、思ったんです」

 齋藤はここ数年、移籍の難しさを感じていた。

 2016年暮れに一度海外移籍のチャンスが巡ってきたが、土壇場でご破算になった。ショックで心と体のバランスを崩したが、2017年のキャンプ中に齋藤はマリノスと契約。キャプテンになり、中村俊輔の後を引き継いでエースの10番を背負い、マリノスの「顔」になった。9月に前十字じん帯を損傷し、離脱を余儀なくされたがチームは5位、天皇杯は準優勝という成績を残した。

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